[書評] イノベーションのDNA

2013年6月29日
2017年5月16日
gappacker
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確信的な製品やサービスを生み出すイノベーティブな起業家や、彼らが興した会社が、他の一般的な起業家や企業との違いを生み出している要因は何なのか?
Appleのスティーブ・ジョブスやAmazonのジェフ・ベゾス、DELLのマイケル・デルなど多くのイノベーターの共通項などを分析することで《イノベーターのDNA》を読み解こうとした意欲的な本です。
著者はハーバード・ビジネス・スクールの教授、クレイトン・クリステンセンとウォートンスクールの教授であるジェフリー・ダイアー、ビジネススクール・大学院INSEADの教授であるハル・グレガーセンの三人によるもの。たぶんビジネス界のバルセロナFCみたいな感じなんじゃないでしょうか。良く知りませんが。

本書は2部構成となっており、第一部でイノベータのDNAを定義し、彼らの持つ五つスキルについて一つづつ解説していきます。そして第二部ではイノベーティブなリーダーが率いるイノベーティブな組織のDNAがどのようなものなのかについて触れていきます。

イノベータのDNA

イノベータが共通して持つ五つのスキルとは認知的スキルである「関連づけの思考」、そして4つの行動的スキルである「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」とがあわさったもので組成され、それをイノベータDNAと本書で名付けています。
イノベータDNAモデル

調査の結果、それぞれの持つ強みのスキルバランスなどに多少の違いはあったものの、イノベーティブな起業家(兼CEO)はそうでないCEOに比べて発見に関わる行動(質問、観察、実験、ネットワーキング)に1.5倍もの時間を費やしていたことがわかりました。

一方で、多数の経営幹部にこれまで生み出した価値あるアイデアについてインタビューを行った結果、革新的なビジネスをあげることはほとんどなく、かわりビジョンや方針を明確な目標を実現するための具体的なタスクに落とし込むのが得意であり、分析、企画立案、行き届いた導入、規律ある実行の4つの実行力は持っていることがわかったそうです。
多くのイノベータがこれらの重要なスキルが欠けていることを自覚して、必要な能力を備えた人材を探し、タッグを組んでいるのですね。

ちなみに本書内で簡単なテストがあったのだが、どうやら僕はイノベータよりの思考回路らしいです。
発見力は47点(発見力が非常に高い)
実行力は33点(やや低い)

そう言えば、観察するの好きだし、質問攻めとか、全然知識のないアウェイに飛び込んでいくの好きだし、頭が散らかった状態で突飛なアイデア出しとか割と得意ですね。
しかも実行力弱めなところまであってる。(そんな気になってるだけでしょうか?)

各スキルに関しての詳しい解説や高め方、ヒントなどは本書で触れていますが、ここでは書いてられませんので本書でどうぞ。
続いて第二部。

イノベーティブな企業のDNA

イノベーティブな組織のDNAには往々にして創設者のDNAが組み込まれていて、自分に似た人材を集め、イノベーションに必要なスキルを高めるプロセスを導入し、哲学を育むという3P(People,Process,Philosphy)の枠組みがあてはまるそうです。

人材 (People)

  • 発見力に優れ果敢にイノベーションを推進するリーダーに率いられていることが多く、階層や事業分野を問わず、すべての管理職が優れた発見力をもっていた。
  • イノベーション・プロセスの着想から実行に至るすべての段階で、各段階に適した発見力と実行力のバランスをもつ意思決定者を配置するよう気を使っていた。
  • イノベーティブな企業は総じて、五つの発見能力に優れた人材をはるかに多く擁していた。
  • 発見志向型の人材を戦略的に有効活用していた

プロセス (Process)

  • 質問、観察、ネットワーキング、実験を社員に促すプロセスを体系的に開発している。
  • リーダーは自らの発見行動を反映した組織プロセスをつくることで自らのイノベータDNAを組織に組みこんでいる。

哲学 (Philosphy)

⑴ イノベーションは全員の仕事である
⑵ 破壊的イノベーションにも果敢に取り組む
イノベーティブな企業がプラットフォームおよびブレークスルーイノベーションのプロジェクトに、著しく高い割合の人材と資源を意識的に配分している
⑶ 適切な構造を持った少人数のイノベーション・プロジェクト・チームを数多く用いる
イノベーションがラディカルであればあるほど、プロジェクト・チームは、既存の事業分野や体制からより自律的にならなくてはならない
⑷ イノベーションの追求においては「スマート」・リスクをとる

まとめ

遅ればせながら読んだ感じでしたが、評判どおりの良書でした。イノベーションという、成果としては見えやすく、生み出す要因となるととても難しいテーマに、膨大な情報を集めて分析したことには頭がさがります。実行型の人間の下でイノベーティブな人が能力を発揮しきれないことや、実行型の人がサポートに回ってうまく行ってるケースを見ることがあるのも納得できる気がします。クリエイティブにビジネスやりたいと思っている人には読んで欲しい一冊です。

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