一見よくあるセルアウト本。その中身は?
タイトルからしてかなりキャッチーです。「話を聞かない男、地図が読めない女」あたりから増えたように感じるこの手の比較系タイトルの書籍はもはや定石のようにタイトルに採用されているわけですが、一向に減る気配がないところを見ると、やはりそれなりに売れるからなのでしょう。
本書は会計と経営の知識を小説仕立てで説明しながら読者の理解を深めさせるスタイルとなっていて、そういう意味では野球部のマネージャーがドラッガーの経営理論を実戦しながら野球部を強くしていく内容で一世を風靡した「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」と同じ手法といっていいでしょう。
これらの小説仕立てのビジネス本も一時期のなんでもマンガ化してしまうトレンドに取って代わって増えた感じがあるのですが、やはり売れ筋なのでしょうか。
僕はフォ○スト出版やサン○ーク出版に多いタイトルや話題性だけで、得るものが少ない売り逃げ型の本をセルアウト本と勝手に呼んでいます。時間ばかり費やし、読むと空腹感を満たしてしまうある意味でバラエティ番組的な危険な本でもありますね。こんな本ばかり読んでると、魅力的な大人にはなれないだろうなぁといつも思ってしまいます。
で、本書は比較系タイトルと小説仕立てというコンボで売る気マンマンのセルアウト本に見えるワケですが、肝心の中身は一体どうなのでしょうか?
読みやすく分かりやすいストーリー仕立て
内容はコンサルタント志望の学生が、赤字続きのファミレスにクラークシップとして入り、問題を解決しながらレストランを再生するというストーリーです。
売上、固定費、変動費、限界利益、限界利益率、損益分岐売上高、人事売上高、目標売上高といった会計の考え方を説明しながらも、置かれた状況に照らし合わせ学びながら実戦していくといった内容です。
会計の本などは睡眠誘導書と言ってもいいような本ばかりの印象がありますが、飲食店という身近で想像しやすい場所を想定して解説することで、理解が深まりやすくなっています。会計という小難しい話を、わかりやすくシンプルにしているという意味では目的を達成しているのではないでしょうか。
また、後半では会計の視点のみに縛られてはうまくいかないという点にも触れていて、会計の知識を基にどのように経営に活かすかという話になっているのはとても好感が持てます。著者についてはよく知りませんが、理論だけの学者ではなくて、実務に携わっている人なのかという印象も受けました。
本書の感想
質の低いセルアウト本かと思いきや、思ったより分かりやすく、すんなりと読める本でした。
当然の事ながら、内容量はかなり少なめですが、いくらでも複雑にできる会計という内容を、中学生でも理解できるくらいにシンプルに説明してあります。そういう意味では本気の人には進めません。それよりは会計を極める気はないけれど、簡単な考え方やキモを押さえておきたいと言うニーズにはマッチする本だと思いました。
価格設定に関する下記の本なんかとあわせて読んでみてもいいかもしれませんね。
[書評] 売れゆきを左右する!価格設定戦略解説本『価格の心理学』
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