盛り沢山のFAB9、まずはYCC
第9回目を迎え、初めて日本で開催されたFAB9のシンポジウムに行ってきました。
シンポジウムの会場は横浜。
まずはYCC(横浜クリエイティブセンター)に向かいます。
着くとすぐに見慣れた顔がチラホラ。
挨拶しつつ受付を済ませます。
今回は特に何も手伝ってないので完全なるビジター。1万円払いました。(デカい)
展示されている機械を見て、カタログだけ収集したら上の階に。
エレベーターを降りると次世代車椅子アシスト「WHILL」が。
FAB9とどう絡んでるのかは知りませんが、やっぱりカッコいいですね。
各国の方々がいろんなものを展示している中で少し話し込んでしまったのが、こちらのスケボーを展示していたアルゼンチン出身でFablabバルセロナに所属しているルチアーノ。やっぱりおもちゃには惹かれてしまうわけです。w
バンブーシートを3層にしたものを圧着して型押しして、整形。
デッキテープを含めた加工はレーザーカッターで行ったそうです。
どれくらい時間かかるの?と聞いたら1日で6個異なる形の完全オリジナルが作れると言っていて、コストは100,00から15,000程度ということ。
彼は同じものは2回作らないそうで、他にもiPhoneで制作したものを複数見せてもらいました。
Fab10はバルセロナでの開催が決まってるので彼も次回は忙しくなるんでしょう。
30分ほど話しましたがすごいいいヤツでした。
他にも日本のレーザー加工漆タイルや
チームモスクワによる装着して手話を行うとLEDに意味が表示されるグローブ
Fablab Kamakuraで作られたサンダル。
こちらはシンポジウムの最後に上映された映画「Making, Living, Sharing」内でもオープンソースの象徴として大きく取り上げられたものです。
で、別会場もあったのですが、勘違いしてさっさとシンポジウムの会場へ。
シンポジウム開始
第9回世界ファブラボ会議(2013)実行委員長であり、日本のFabの中心的存在であり慶応SFCで教鞭をとる田中先生の講演からスタート。
田中先生がどういう人かっていうのは著書『Fablife』を読んでください。
内容は面白いし、何が起きていて、何が起こりうるのかを想像しやすいとても面白い本です。
田中先生の話はこれまでも何度か聞いていて、お世辞にも話が巧いとは言えないのですが(話したい思いと内容が溢れだしちゃってる感じです。)、確固とした信念があり、時折、つき刺さる破壊力のある言葉を投げかけてきます。
田中先生は今回のFAB9を世界デザイン会議になぞらえていたのですが、今後の展開によってはそのような位置づけになってもおかしくないくらいの会でした。今後、日本のものづくりが、世界に対してイニシアチブをとって発信していたメタボリズム運動のようなものが起きるとすればワクワクします。
田中先生の後にはFabを提唱したニール・ガーシェンフェルド氏を含めた10人が『FabLab-未来をつくる10の視点』として休憩を挟みながら登壇しました。
長くなるので各スピーカーの話については割愛しますが、世界各地で横断的に様々な事が行われているのを知れるのはとても面白かったです。
パネルディスカッションでは省庁とムーブメントのズレも
パネルディスカッションでは田中先生とニール・ガーシェンフェルド氏、そして経済産業省製造産業局素形材産業室長である田中哲也氏と総務省情報通信国際戦略局の融合戦略企画官である中村裕治氏、そして独立行政法人 国際協力機構の研究所顧問である荒川博人氏によるパネルディスカッションが行われました。
これまで世界各地で行われている面白い試みの話が続いていた中で、このパネルディスカッションはすこしトーンが変わるとともに、日本が抱える課題を浮き彫りにしたパネルディスカッションでした。
立場的なものもあるのかもしれませんが、省庁のお二人の話に少しズレがあることは会場にいた多くの理解者が感じたことでしょう。
Fablabやいわゆるメイカーズムーブメントはボトムアップのムーブメントであり、様々な垣根を越え、横断的に、集合知を活かしながら発展してきて、今にも革命を起こしそうという革命前夜というのが「今」の状況だと思っています。
そんなタイミングで旧態以前の価値観を用いて、それを上からトップダウンでコントロールしたいという願望が垣間見えるというか、そもそもスタート地点というか視点違うよね?って話がちょいちょい出てくるわけです。
様々な産業が衰退している今だからこそ、お互いに出来る事がある筈なのに、彼らの認識のズレは今後の発展のネックになってしまうかも知れないとすら思えました。
まずは肩書きをもっと分かりやすいものにした上で、現地に赴むいてヒアリングなどを行い、状況を正しく理解し、設備に投資したり、これらのムーブメントの発展を阻害する要因を取り除くといったスタンスで仕事をしてもらいたいと思いました。
そして同時にFablab関係者は彼らを教育することをキチンと行わなければ、うまく活用することは困難だと思いました。
一方で、ご年配の荒川氏が適切に現状を認識しておられることから、年齢による差によるものではないのだとわかり安心します。
Fabアカデミー(授業紹介と卒業式)
Fabアカデミーとは各種工作機械の使い方を覚えながら、自由にものづくりができるようになるための半年間の講座でそのカリキュラムを修了した人の卒業式が行われました。
FABシネマ “Making, Living, Sharing”
最後に世界のFablabを旅していたノルウェー人、イェンスのドキュメンタリー映画を公開し、幕を降ろしました。
この映画は世界のFabLabをストーリーとして繋げるという意味で、そしてものづくりのオープンソース化を加速させるという点でとても意味のあるものだと思いました。
SUPER FABLAB見学
終わった後に午前中に見逃したSUPER FABLABのほうを見学します。
レプリケーター
ここでみんないろんなものを作ってたらしい。
ShopBotもあります。お値段250万円也。
Fablab Kannai オープニングパーティ
その後、Fablab Kannaiに移動してオープニングパーティに参加。
今後の発展に強く期待してます。
3Dプリンターのフィラメントを再利用するための機械が置いてあって、制作した方と話している時に何人かの海外の方と話したのですが、みな第一声が「Is this open-source ?」なんですよね。
海外ではここまでオープンソース化の意識が進んでるのかと思いました。
日本人で「これ、オープンソースですか?」って一声から会話が始まることってありませんよね?
これからそうって行くのでしょうか。
なぜか焦りを感じました。
僕の考える日本のFablabの現状と課題
今回は一日だけの参加でしたが、登壇者の話を聞いたり、関係者の方々の話していていろいろと考える事がありましたのでまとめてみます。
こんなことを書くと関係者の方を不快にさせてしまうかもしれませんが、現時点で日本に開かれた工房としてのFablabがあるのかは疑問です。
もちろん僕は全体を見渡せる訳でもありませんし、Fabalab KamakuraとFablab Kannai、Fabcafe、そしてSFCくらいしか行った事はありません。
デザインやものづくりに人並み以上に関心のある一個人として見えている範囲で感じていることです。
開かれた工房はどこにある?
僕は鎌倉に住んでいるので、鎌倉に日本初のFablabが出来ると知った時には激しく興奮しました。
期待もこめクラウドファンディングでも支援させていただいた事もあります。
しかし、Fablab Kamakuraは僕が思い描き、期待していたようなカタチとは少し異なっています。
もちろんそこには人・モノ・スペースなど物理的な制限もあり、運営者の方針もあるため、ただ単に僕の思い描いていたものとは違ったというだけのことです。
FabLab Kannaiのほうはまだ機材はないけどスペースはあるので期待しています。
僕が待ち望んでるFablabのカタチ
日曜大工好きの普通のおっちゃんが通ってるうちに、機械の操作覚え、どんどんスキルアップして作ったものをオープンソースで公開したり、歳や経歴の違う人が協力して何かを作ったり、無名の天才達の集合知を活かしてユニークなものづくりが生まれたり加速する、そんなスペースを僕はFabLabに思い描いていました。
ただ、それが理想論であることもよくわかっています。
日本のFabLabの現状
イェンスの映画でもあったのですが、公開されている椅子のデータをダウンロードして手を加え、削りだして制作できるといった環境が整っているFabLabは日本ではまだないんじゃないでしょうか?
世界中のFablabでこれくらいのことが出来る場所がどれくらいあるのかはわかりませんが、海外の人達がオープンソースをやりとりしてモノを改良して、また公開するといったやりとりをしている中でひょっとしたら日本は出遅れてるのではないか?といった懸念を抱いてしまいました。
人が先か、環境が先か?
Fablabの話になると必ずといっていいほど出るのが設備やスペースなどの環境の話と、その場を運営する人の話になります。
FabLab Japanでも書かれているように、Fablabの定義として下記の標準機材を最低限揃えていることという条件があります。
基本機材
– レーザーカッター
– CNCミリングマシン
– CNCルーター
– ペーパーカッター
– 電子工作機材一式
– ビデオ会議システム
推奨機材
– ミシン
– 3次元プリンター
このリストを見る限り、最低限のスペックのもので揃えても500万はかかりますし、それなりのものを揃えたら1千万は軽く超えてしまうわけです。
そしてこれらのものを置くスペースが必要になり、さらにFabMasterと言われる人材が必要になる。
で、設備と人とのどちらが先かみたいな話になりがちなのですが、機材がなければデータを改良して公開などといったことができず、やれることが減ってしまいます。
やれることが少なければ結局人は来ないのではないでしょうか。
では、足りない機材をそろえるためにどうするか?
営利目的で資本が投入されれば、導入は難しくないでしょうが、オーダーして作ってもらうFabCafeの仕組みや、高額なワークショップなど、お金持ちの道楽のようになってしまうのでは、ビジネスとしてはありかも知れませんが、FabLabのあるべき姿とは少し違うと思います。
クラウドファンディングの活用について
僕は周辺地域や近隣の人に対して開かれた工房としてFabLabを運営するのであれば、機材の購入にクラウドファンディングを活用するのは多いにアリだと思っています。
これに対しては、機材を使いたくて集まる人の質があまり高くないと言った声もあるようですが、僕には正直わかりません。
ただ、機材や環境がないのに人が育つかどうかは疑問ですし、環境さえあれば少なくとも人は集まり、その中で頭角を現す人は必ず出てくると思っています。
むしろ営利目的の資本が入ることにより、お金があるだけの人が集まる方が質は悪くなる気もします。
国や行政の支援が適切に行わればムーブメントは加速する
FabLabは図書館のような公共性の高い施設だと思います。
営利団体が商機ととらえ参入するのは別に構わないと思いますが、それだけでは面白みがありません。
長い目で見た時に、地域や産業に与える効果は大きいと思いますし、国はもっと支援すべきだと思います。
産業構造が大きく変わる中で如何にしてこれらのムーブメントを支援し、下支えすることができるか?
それによってどれだけの成果を得ることができるか?
やり方や方向性ではなくて、阻害要因をなくしたり、経緯や結果を見守る事が求められているのだと思います。
なんだかんだで僕らはものすごいエキサイティングな時代を生きている。
長くなりましたが、IT革命のまっただ中に突入していて、それらの与えたインパクトが新たな産業革命やバイオ革命を誘発するというとてつもない変化のはやい時代を生きているんだと思うとなんだかんだで興奮します。
政府がデタラメなことをしていたり、営利企業がありえない大惨事を起こしたりする中で、FabLabのように自分たちで作っていくようなコミュニティが無数に出来た時に市民が力を取り戻し、次の時代の超成熟社会がやってくるのではないでしょうか。
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