体験としての書籍
ひょっとしたらそれは、コーヒーや紅茶の香りを楽しむことと似ているのかもしれない。
本をただ読むだけのものとしてしか認識していないのであれば、それは少しもったないと思う。
そこには紙の質感があり、手に取ったときの手触り、重みとサイズ感、時に気づかれないほど繊細に細部に施される加工処理、インクの色やレイアウトなど、書籍には、ただ文字を読むだけではないアプローチの仕方があり、そこで表現していることが読書体験を特別にすることもあると思うのだ。
本書はそんな特別な「しかけのある本」を集めて紹介している本である。
以前紹介した[書評] 世界中の装丁の美しい本を集めた写真集『世界の美しい本』に本の構成やつくりは似ている。
読んでみた感想
一口に書籍と言っても、いろんな仕掛けがあることが確認できます。
中には知っている本だけど手に取っていなかったために、その仕掛けに気付けていない本もありました。定期的に本屋に行っているとはいえ、今はAmazonで購入してしまうことも多いので、意識しないと見逃してしまうんですね。
近年の電子書籍化の流れや、端末の普及などの環境の変化もあり、内容以外の要素が軽視されつつある気がしている。
もし近い将来、紙の書籍がなくなってしまうのであれば、それは寂しいことである。そう思う人が一定数いる限り、すぐに無くなるということはない気もするのだが、少なくとも徐々に衰退していくことは間違いないだろう。ひょっとしたら20年後には紙の書籍がただの嗜好品になっている可能性すら否定できない。
鮮度が重要で、表現をあまり必要としないビジネス書や技術書、教科書、参考書類は全て電子書籍になって、アートやデザイン、詩集、絵本などは紙のままというのが、個人的には理想ではあるのだが、一体どうなっていくのだろうか。電子書籍における新しい表現方法も豊富になり、結局紙の本は駆逐されてしまうのだろうか。
想定デザイナーの素晴らしい仕事を見ることができる一方で、眺めながら紙の書籍の未来を案じてしまう一冊であった。
巻末にある『ブックデザイン用語集』も本好きとしては参考になる。
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