[映画] ロスの危険地帯の今を描くポリスアクション『エンド・オブ・ウォッチ』

2014年8月14日
2015年12月7日
gappacker
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タフじゃなければやってられないロス市警の日常

ロサンゼルスきっての危険地帯をパトロールするロス市警の白人巡査テイラーと、メキシコ系巡査ザヴァラ。正義感に燃え、任務に就いていた彼らだったが、ある事件をきっかけにメキシコ系麻薬カルテルから命を狙われてしまう。

ポリスというとエディーマーフィーやジャッキーチェンを思い浮かべてしまうオジサンもいるかもしれないが、これはLAの危険地帯で生きる警官たちの友情と、タフな日常を描いた硬派な作品である。

予告編はこちら

映画を観て

僕はアメリカは東海岸しか行ったことがないので、いわゆる西海岸に関する知識は映画や音楽などを通して得たものでしかない。そんな僕の特に深くもない知識の中で、この映画に真っ先にリンクしたのが、LAを舞台にした警察とギャングの映画『カラーズ』である。

ヒップホップなどのブラックカルチャーを追っていると必ず出てくるこの映画だけど、カラーズでとりあげられていたブラッズとクリップスの抗争はいわゆる黒人同士の抗争だった。しかし、時代が代わり、その対立構造が黒人ギャング対ヒスパニック系ギャングの抗争になっているのがこの映画を観ていてよくわかる。

10年くらい前に、メキシコ系犯罪組織のネットワークが全米に拡がりつつあるため、なんらかの措置が必要だという警笛をならす内容のドキュメンタリーを見た。
確か60ミニッツだったと思うんだけど、裏切りものは必ず見つけだして殺害するという組織のルールが徹底していて、それは女性でも同様だと女性メンバーが誇らしげに語っていた。

いかにしてメキシコ系ギャングは巨大化したか?

なんでここまでメキシコ系ギャングが力を持ったのか。
その背景には僕は大きく三つの理由があると思う。

ロケーションと人口

一つは土地柄という点。もともとLAはメキシコだし、スペイン語を話すヒスパニック系住民が多い土地。
メキシコとの国境は長く、職を求めて不法入国するメキシコ人は後を絶たない。
白人と黒人の人口が減る中、ヒスパニック系移民が増えたこともあり、絶対数が増えたことはかなりのインパクトだったろう。

親戚の繋がり、同胞意識。

建国からたかだか250年しか経っていないアメリカにおいて、白人の多くは新天地を求めてやってきたヨーロッパからの移民達、またはその子孫である。一方メキシコ人は陸続きでありながら出稼ぎ労働者としてやってくる者も多く、祖国との密な繋がりを保っていて、先にいるものが後から来たものの面倒をみる等のシステムもできている。映画内でも出てくるが、家族付き合いを大事にするという民族性が強いことは、その基盤となっている。

資金力

アメリカ大陸において、コロンビアなど南米からのドラッグは海岸線に沿うように北上してアメリカに入り、アメリカ全土に拡がっていく。そう聞いたことがある。そしてそこで莫大な冨を得ているのがメキシコ系ギャング達である。豊富な資金力を持ち、血の結束を持つ彼らは、さらなる組織の拡大を目指せるだけの基盤があるのだ。

アメリカへの不法入国の話や、ヒスパニック系ギャングの残虐性や凶暴性については、映画『闇の列車、光の旅』でも描かれている。
よくできた映画なのであわせて観ると理解が進むだろう。

以上3つの理由はヒスパニック系ギャングの台頭の理由として説得力が強いと思っているのだけど、その一方でアメリカ国内における黒人の地位向上もある程度影響しているだろう。ここ10年、20年、エンターテイメント業界やスポーツ界で、アメリカを代表するような黒人スターが沢山生まれ、ついには黒人初の大統領まで誕生した。もはや黒人は差別され、チャンスがないからギャングになるしかない、という図式は成立しない。
世の中に対する不満がギャング達のパワーの源であるとすれば、黒人ギャング発生メカニズムの根底が変化しつつある。
そしてそこに新たに台頭してきたのが、ハングリーなメキシコ系ギャングというわけである。

最後に

僕はアメリカ西海岸には行ったことがないが、メキシコには行ったことがある。
メキシコとキューバとグアテマラの3カ国を1ヶ月で回ったため、あまりゆっくりはしてない。あくまでメキシコで過ごした約20日間ほどの印象でしかないが、メキシコは危ない面もある一方で、遺跡などの観光資源が豊富で、タコスも美味しいし、一般の人はとても親しみやすい、とても魅力的な国である。
機会があればぜひ行ってもらいたいと思う。

この映画はただのポリス映画というよりも、現在のLAやアメリカを理解するうえで面白い作品だと思います。
そして本物の警官かと思わせるような主演の2人の迫力ある演技にも注目していただきたい。

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