権利を求めて戦う武装組織の拠点の村、オベンティックを訪れた時の話

2011年8月24日
2016年7月6日
gappacker
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この記事は2008年04月にメキシコ、キューバ、グアテマラを1ヶ月間旅した時に書いたmixiの日記に加筆訂正を加えたものです。

オベンティックという村がメキシコのチアパス州にある。

サンクリストバル・デ・ラス・カサスからコレクティーボという乗り合いバスで、約1時間あまり山道を登ったところにある。
乗り合いバスと言うと聞こえはいいが、実際は観光客などいない現地の人達とのワンボックス寿司詰め状態である。
小雨が降り、霧の立ち込める中、バスは山道を進む。

まるで雲の中を走っているようで20m先が全く見えない。
わずかに光が見えたと思った瞬間対向車とすれ違う。
例えドライバーが走り慣れているとしても、
いつ事故が起きてもおかしくない状況だ。
ニュースでたまに見る、「日本人旅行客がバスの横転事故で死亡。」とはこういう状況だろうと納得する。
霧でよく見えないもののそこは山道、一歩間違えれば崖の底だ。

霧のため、いつもよりスピードを落としていたのだろうか、
1時間半ほどしてからバスは止まり、
ドライバーがこちらに目で合図を送ってくる。

「オベンティック?」
こちらの問いに頷くと同時に指を指す。
その指の先にはゲートがある。

バスが走りさると俺は霧の立ち込めるなか、独りになった。

ゲートまで進むと黒い目出し帽を被った女性がいた。
「キエロ ミラール アキー」 ここを見たいという意思を拙いスペイン語で伝える。

「パスポルテ」
と言われパスポートを手渡す。
女性はパスポートを受けとると「モメント」といい残し霧の中に消えていく。

5分程して女性が戻ってくると
ゲートの中に招き入れられ、少し歩いた後、ある小屋の前で少し待たされる。
小屋の前にはどんよりとした目つきの汚れた犬達がいる。
おそらく飼い犬ではあるのだが、一度、隙をみせたら野生の性を剥き出しに、全力で襲ってきそうな緊張感を兼ね備えている。
それはバンコクの路地裏にたむろする野良犬達の持っている堕落と凶暴性を兼ね備えた目つきにも通じるものがある。

入室を許可されると、そこには3人の目だし帽を被った男が長机を挟み、こちらと対峙する形で座っている。

部屋の壁にはスローガンやプロパガンダ、ゲバラなどのステッカーなどが彼らの志の強さを示すように、
そして小屋の造りの粗さを補うようにして覆っていた。

椅子に座るように命じられると面接が始まり氏名や国籍、職業、所属など基本的なことを聞かれる。
英語を話す人間がいなかったため、カタコトのスペイン語で意志疎通を図ろうと試みるが当然、手こずる。

しばらくの間、成立しているとは言いがたい。気持ちだけ入ったやり取りをした後、
退室を促され、もう一度別の小屋の前に連れていかれ、ここでもまた少し待たされる。
気がつくとやはり、犬達に包囲されている。

入室を許可されるとここでも3人の目だし帽を被った男に面接される。
気持ちをうまく伝えられないままだったが
結局、織物を見たいという名目での見学が許された。

スペイン語がわかれば彼らの過去や現状などの説明を受けられるらしいのだが仕方ない。
霧の中を彷徨うように村の中の建物、壁面、織物を織る作業を見てまわり、村を後にした。

活動拠点とはいっても土産物屋があったり
入植者たちによる不条理な搾取の歴史を写真を用いて伝えてあったりと
対外向けの広報、そして資金調達のための村というスタンスであろう。

どこかで、のどかな空気も流れていた不思議な村だった。

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