Photo by Timothy Hale
アメリカで大ヒットした戦争映画
クリント・イーストウッドが撮り、興行成績がプライベートライアンを超えたと話題の戦争映画『アメリカン・スナイパー』。
興行成績がすごかろうと、全米が泣こうが、わめこうが、まったく興味はないんだけれど、プライベート・ライアンを超える可能性があるのであれば見ないわけにはいかない。
特に意図したわけではないけれど、終戦記念日に観た。
あらすじ
アメリカ海軍のエリート特殊部隊シールズに所属し、イラク戦争に4度従軍、少なくとも160人を殺害したスナイパー、クリス・カイルの自叙伝をもとにした話。
予告編はこちら
映画を観た感想
戦争映画は『ゼロ・ダーク・サーティ』以来。
[映画] ビン・ラディン殺害の舞台裏で何が起きていたのか?『ゼロ・ダーク・サーティ』
この作品に限らず、戦争映画は戦勝国の目線で撮られ、そこにイデオロギーが加味されていたり、不都合な情報が間引かれていたり、プロパガンダ的な意味合いを持っていたりすることがあるため、普通の作品を見る以上に冷静な視点での鑑賞が求められる。
主人公はイラク戦争中に160人以上を殺した特殊部隊のスナイパーなのだけど、映画の序盤でアメリカ大使館爆破テロのニュースを見て志願兵になり、厳しい訓練を経て、9.11の同時多発テロのニュース映像がながれた後、イラクに派遣される。
同時多発テロ事件は、アメリカ人にとって、初めてアメリカ本土が外部の勢力から攻撃されたとても強烈な出来事である。国民全体の愛国心は高揚し、反戦を口にしようものなら何を言われてもおかしくないくらいのムードが漂っていた。おそらくこれを機に多くの志願兵が戦地に赴いたのも確かだろう。
だが、ちょっと待って欲しい。
9.11はテロ組織アルカイダによる犯行で、イラクとは関係なかったし、イラクには大量破壊兵器もなかった。イラクという国の政情がどうであったにせよ、イラク戦争はアメリカの言いがかりによって始まった戦争で、同時多発テロがあったから戦争になり、結果として大量殺人に至ったという点に正当性はない点を忘れてはいけない。
ちちろん、映画ではそんなことには触れられていない。
マッチョな兵士の壊れていく心
戦場に赴いた兵士は、一体どれ位の敵兵を殺すのだろうか。そこに大義名分があれ、その大義名文が偽りであれ、一度戦争が始まってしまえば160人を殺害するという大量殺人が肯定され、英雄視されてしまうのが戦争である。主人公も、仲間を救えなかったことに対して後悔の念を口にするシーンはあるが殺したのは野蛮人であると言い放つ。
そもそもそれくらいのスタンスでなければシールズには所属できないのかもしれない。
しかし、都合のよいアメリカ的な論理に従って、いかにマッチョに振舞っても、殺す事が日常化し、いつ殺されるかもしれない戦場での張り詰めた緊張感の中で兵士の心は病んでいき、徐々に人間らしさを失っていく。そしてこの映画は家庭を持つ一人の兵士が、戦争によって精神を蝕まれていくというPTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)にフォーカスした作品である。
戦争の心の傷跡は被害者だけでなく、加害者にも影を落とすのだ。
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