[書評] タブー視され封印されつつある日本の側面を知る『日本の路地を旅する』

2014年8月7日
2017年5月16日
gappacker
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日本の路地を旅する

封印されつつある日本の側面

著者が本書で「路地」と呼んでいるのは、いわゆる非差別部落のことである。

「部落差別」や「同和利権」などという言葉として、存在そのものはなんとなく知っている。なんとなく食肉や動物の皮を扱っている人達に多いということも知っていた。
しかし、それが何か?そして何故差別があるのか?と問われると、自分が何も知らないのだと再認識させられる。

僕のように首都圏で生まれ育っているような人達にとっては、皆同じようなものなのではないだろうか。

そもそも、これだけ溢れる情報の中で、タブー視され、伏せられているようなことである。
他の人がどれくらいの知識や、どのような知見を持っているかも知らない。
それくらい実体験と結び付かない馴染みの薄いものである。

この本ではそんな実体のつかみにくい、伏せられた日本の側面を扱っている。
歴史的観点を踏まえつつ、著者の実体験や、各地の路地を自らの足で取材して得た話が丁寧に書き綴られている。

著者について

著者は大阪の「路地」で生まれ育った人である。
食肉店を経営する父親のもとで少年期を路地で過ごし、現在も日本各地の路地を旅して歩いているようだ。1973年生まれであるから、少年期といってもそう遠い昔のことではない。30年程前の話である。

当然の事ながら、そこに変な劣等感はない。
文章を読む限り、被害者意識もないように感じる。
デリケートとも言えるこの問題に、構えることなく真っ向から冷静な視点を持って飛び込んでいる。
これには著者のバックグラウンドが多いに寄与しているだろう。

読んでみて

この表現がふさわしいかどうかは別として、圧倒的に面白かった。
これは歴史的側面の話も多数出てくるので、日本を知る上でもいい本だと思います。

人権問題に関する意識の高い人、歴史の好きな人、地方の文化に興味がある人、ルポが好きな人は読んで欲しい。
そしてそれ以外の、知的好奇心の強い人にもお薦めします。

読み物としてだけではなく、資料的価値も高そうな一冊。
久しぶりに知的好奇心を満たしてくれる興味深い一冊に出会えました。
ちなみにこの本読んで面白いと思ったら、以前紹介した[書評] 東京からはじめるディスカバリージャパン『東京番外地』も楽しめると思います。

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