新しい旅のスタイルをまとめた本
「履歴書に書ける旅」をテーマにしたセルフブランディング的要素の高い旅のケーススタディー本。
本書の構成
第1章でテーマのある旅のすすめ
第2章で11人の旅人のインタビュー
第3章で計画の建て方やティップスなど
といった感じです。
読んでみた感想
この本を読んで感じたのは旅の世界も随分と変わって来ているということ。
インターネットやSNSの普及で、旅は以前よりもっと身近になった。
旅情報と言えば、各地の宿の情報ノートで仕入たり、旅人同士で情報交換していたのが当然だったスマホのない時代とは明らかに違ってきている。
この本の中で紹介されている人達は、ある意味で目的意識を持った”意識の高い旅人”だと言えるかもしれない。
そこにはドロップアウトして、世界を観ることで救われたような人や、ただ好奇心に突き動かされるようにして飛び出した冒険好きから匂い立つ荒々しさや、土臭さを感じることはなかった。テーマがテーマだから仕方ないのかもしれないが、どうも少しスタイリッシュ過ぎる気がしてしまうのだ。
もちろん他人の旅のスタイルにケチをつける事が、どんなにくだらないことかっていうのはわかっているつもりだし、何ヶ国回ったとか何年間放浪していたとか、そんなんで競うのもバカらしいと思う。単純に時代の変化とともに、旅が多様化しているだけなのかも知れない。
ただ、最近巷に溢れる「世界一周経験者」の傾向は以前とは大きく変わってきているように思える。
僕はたかだか20カ国、1年間の留学期間を抜きにすれば、海外を旅した期間もトータルで9ヶ月間というような、ライトなバックパッカーなのだが、昔出会った世界一周していたような人は、2年以上とか放浪して、50カ国以上は行っている猛者達だった気がする。しかし、最近では半年間くらいの世界一周経験者が増えているようだ。
半年で世界一周なんかどう考えても無理だろうと思っていたら、陸路はあまり使わず、飛行機で点を繋ぐように移動し、文字通りの世界を一周するみたいなのだ。
確かに「世界一周」である。しかし、僕が以前であって話を聞いたような世界一周していた人間とはどうも種別が違うような気がするのだ。
いわゆるバックパッカー的な旅人ではなく、海外旅行を繋げ合わせた海外旅行拡大版という感じである。
「世界一周」という言葉が、その既成事実だけが前にあり、何かが抜け落ちてしまっているような違和感。
これはやっかみなのか?そう思い自分に問いかけてみるが、そうでもない気がする。
どちらかというとアンダーグランド的な要素をもったものが浮き上がり、ポップ化する時に感じる一種の寂しさに近いのかもしれない。
最近は情報が簡単に得られることもあり、秘境の高解像度写真が、訪れる前に見えてしまうような時代である。
ひょっとしたら昔、旅人がその地に立った時に抱いた、身体の芯から湧き上がってくるような感動を得るのこと自体が難しくなってるのかもしれない。
そのような状況では、驚きにであうことよりもテーマを持ったプロジェクトとして旅をするのが普通になってしまうのだろうか?
かつて、この島国の閉塞感や息苦しさに苦しみ、旅に出たことで救われた自分のような人間からすると、プロジェクトとして旅をするような人が増えたらどう感じるだろうか。
もちろん、そういう旅も素晴らしいと思うし、あってしかるべきだと思う。しかし、昔の自分がそういう人達ばかりに旅先で出会ったら、なんだか結果を出さなきゃいけないような、そんな息苦しさを感じてしまっていたに違いない。
プロジェクトとしての旅人は、プロジェクトが終わっても旅を続けるのだろうか。
随分と恵まれた時代になったと感じるとともに、なぜか少し寂しく感じてしまうような本でもあった。
20代の若い人にとっては良い本だと思う。自分も昔この本が出ていれば読んで参考にしていただろう。
時代は変わるし、ひょっとしたら自分は古い人間になってきてしまっているのかもしれない。
ただ、スケジュールやプロジェクトをガチガチに組んで、それに引っ張られるのではなく、本能に従い、柔軟に目的地を変えたり、自分を解き放つ瞬間を旅の中に組み込むことを忘れないで欲しいと思った。
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