[書評] 大事なことに気付くけるかも『TOKYO 0円ハウス 0円生活』

2014年6月23日
2017年5月16日
gappacker
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今や総理な変人の起源

坂口恭平という男を知っているだろうか?
ホームレスの住居を撮影した写真集『0円ハウス』を出版して話題になり、建築家でありながら、一般的な設計とは違った分野で存在感を放ち、震災後は故郷の熊本に移住し、避難者受け入れのための場所『ゼロセンター』を立ち上げ、「新政府」を樹立し、総理になった男である。

経歴だけ聞くとなんだか奇をてらっただけのゲテモノと誤解されるかもしれない。
僕は名前や活動をなんとなく知っていただけで、著書を読んだのは初めてだったのだけど、この本を読み、ようやく彼の辿った道を大まかにとはいえ、理解することができた。

先入観のないフィールドワークの賜物

本書はホームレスの「ホーム」、そして「ライフスタイル」に焦点をあてつつ、坂口氏本人についてもふれられている本なのだが、まず驚くのが対象との距離感。ホームレスの懐深くに入った結果としてでしか、見えてこない世界をまとめている。

このような内容をまとめるには、そもそもホームレスに対しての偏見や先入観を持っていては不可能だし、ホームレスというだけで勝手に同情してしまうような短絡的な思い込みをしてしまっている人には絶対にできない仕事なのである。

紹介されているホームレスの人々の生活は思っている以上に豊かで、創意工夫に満ちている。
読み進めるうちに、一体、豊さとは何なのか?ホームとは?お金とは?ゴミとは?
それまで当たり前だと思い込んでいた価値観が本当に正しいのか疑問に思えて来る。

このフィールドワークを行っていた時点で、彼はまだ若く、飾るものも、飾る必要もなかったということも大きかったのかもしれない。しかし、それと同時に彼の人間性や好奇心、人との向き合い方があったからこそ出来たことであると言える。

若者には大きく道を踏み外しかねない良書であり、既に歳をとってしまった昔の少年少女にも、何か大事なものを見直すきっかけになるかもしれない。


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