ディベートの本
本書は京都大学の教養学部で教えている「意思決定の授業」の内容を凝縮したものだそうです。
タイトルは決断思考となっていますが、ベースとなっているのはディベートの方法論で、いかにしてメリットとデメリットを比較し、その時点での最善解を導き出すかというのがこの本の趣旨です。
つまり、ディベートの考え方を身につけ、相反する視点から、あらゆる可能性を網羅し、考察することによって自分で答えを出せるようになるということです。
意思決定に至る順序として、まず「○○するか、否か」というようにテーマを決め、そのテーマによって起きるメリットとデメリットを挙げていきます。
メリット、デメリットにはそれぞれ下記の3条件があります。
メリットの3条件
1. 内因性(なんらかの問題があること)
2. 重要性(その問題が深刻であること)
3. 解決性(問題がその行動によって解決すること)
例:テーマ「○○するか、否か」
1. ××が問題になっている。
2. それは▲▲なのでとても深刻である。
3. ○○することでそれは解決する。
つまり○○すべきである。
デメリットの3条件
1. 発生過程(論題の行動をとったときに、新たな問題が発生する過程)
2. 深刻性(その問題が深刻であること)
3. 固有性(現状ではそのような問題が生じていないこと)
例:テーマ「○○するか、否か」
1. ○○すると■■が起きる可能性が高い。
2. ■■が起きると××など悲惨なことになる。
3. ○○しなければそのようなことは起きない。
つまり○○すべきではない。
異なる立場からそれぞれ3条件を出した後、今度は各条件に反論を加えて行きます。
主張が正しいかどうかについて反論を加えていく事で最終的な結論に近づいていきます。
ちなみに正しい主張の3条件とは
1. 主張に根拠がある
2. 根拠が反論にさらされている
3. 根拠が反論に耐えた
という事になるそうです。
そして主張と根拠のあいだにある、よく考えないと見えてこない前提の考え方を「推論」といい、推論には下記の3タイプがあります。
1. 演繹
2. 帰納
3. 因果関係
1.の演繹とは、前提条件があって答えが導き出されるものです。
〈前提〉
1. A = C
2. B = A
〈結論〉
3. B = C
問題点は前提が間違っていたら、間違った結論に達してしまうことです。
2.の帰納とは、いくつかの事例を挙げた後、結論を導き出す方法です。
・A-1が○○した
・A-2が○○した
・A-3が○○した
・よってA類は○○する
こちらもやはり問題点がありいくら個別の事例を挙げたところで、結論が正しいとは言えず、都合の良い事例、偏った事例だけを集めてしまうことがあるそうです。
そして3.の因果関係ですが、原因と結果の関係です。
こちらは原因と結果のどちらが時間的に先行しているかを常にチェックすることを心がけるのが大事だそうです。
特に注意すべき点は
1. 因果関係が逆
2. 因果関係と相関関係の混同
3. 特定の原因のみ着目する
の三点で、挙がっている事実(データや現象など)のひとつひとつは本当のことなので、ダマされやすいとのことです。
「英語のできる人は収入が高い」というデータがありますが、実は英語ができるから収入が高いという因果関係にあるのではなく、英語のできる人は受けた教育のレベルが高い傾向があり、その結果、就職先も高収入になりやすいという相関関係にある。
という例がとてもわかりやすいです。
以上のような部分に気をつけて結論を導きだすというのが大まかな内容ですが、他にも、専門的な意見については、専門家の意見を活用して信頼性を高めるとか、引用されているデータの原典をあたってみるなどといった大事なことが書かれています。
対象が学生向けの本でしたが、自分にとっては良い本でした。
普段からメディアを疑う癖がついている人でも、ここまで体系化して身についている人はそれほど多くないのではないかと思います。
メディアや国の発表する情報が信じられない時代。
自分で答えを導き出す為の技術をこの本で身につけてはどうでしょうか。
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