停まってくれたトラックに駆け寄り、ドアを開ける。
珍「今、停まってくれたんですよね?」
運「うん。乗って行く?何処まで行くの?」
珍「とりあえず熊本辺りまでは行きたいと思ってるんですけど、それより進めるならもう少し行きたいです。」
運「途中でシャワー浴びるの待っててくれたら福岡まで行くけど。」
珍「じゃあ、お願いします。」
乗せてくれた方はトラックの運転手はまだ1年もやってないとのことで、その前は無職だったとか。
その前は何をしていたのかというと山岳救助隊にいたらしい。
高山病が悪化し常態化?して山にいられなくなったとか。
「薬飲んで誤摩化してやるでしょ?持たなくなっちゃったみたいでね。」
山岳救助隊は公務員で警察官なんですね。
15人ほどのチームが3チームの交代制で山にずっと入っているらしいです。
登山届けを出すのはやはり大事だと言っていました。
面白いのが、一番問題を起こしやすいのが女子大生のグループだという話。
なんだかグループが分裂したりして問題起こすとのこと。
よくわかりませんが救助をしていた人がそう言うのでそうなんでしょうね。w
後は熊に遭遇したら頭を起こさないようにして抱きつくといいと言っていました。
なかなかできませんよね。w
珍「抱きついた後、どーすんですか?」
運「仲間が来るのを待つ」
一人じゃ何も意味ねぇ。w
途中で一旦コンビニ降ろされ、運転手のオジサンが家でシャワーを浴びてくるのを待ちます。
20分ほどして戻って来たトラックに再度乗り込みます。
「福岡で荷物降ろしてからなら山口の辺りまでいくけど、待ってるなら乗っけてってもいいよ。」
帰りはどこに寄り道して行くか決めていなかったので、とりあえず一気に本州入りすることを決める。
こんな感じなので、行きで飯を奢ってくれると言っていた取締役の方には連絡できませんでした。
まぁすでに夜中ですしね。
途中のSAでいったん仮眠するとのことで僕は降りてこっそり熊本らーめんをいただきます。
ドーナツからなんも食べてなかったからね。
時刻は深夜3時。
ラーメンを食べ、ブラックの缶コーヒー飲みながら30分程時間を潰してトラックに戻るとオジサンが目を覚まし、気を使ってくれたのかすぐに出発する。
途中で物流倉庫が空く時間に到着するように少し仮眠し、物流倉庫に向かうのだが、どうやらオジサンは場所を知らない様子。
近くまで行ったものの、グルグル回っているので会社名を聞いてiPhoneの地図で検索。
珍「多分この建物なのでさっきの通りを回ったところから入るんだと思いますよ。」
運「あ、そう?」
便りなさげに答えてきます。
珍「あー、そこ入ってください。多分それです。」
運「うん」
ということで無事到着。
ここまで乗せてもらったので
珍「俺、荷下ろし手伝いましょうか?日払いのバイトでいろんなことしてますんで、問題ないですよ。」
運「ホント?」
と、ちょっと嬉しそう。
で物流倉庫が空いて倉庫の人といろいろ話してるのを一緒に聞き、作業の流れを把握する。
一応、部外者なので運転手さんに確認してから作業をする。
「あそこのパレット使って問題ないですかね?」
「製品毎でいいですよね。?」
「高さはどれくらいまで積みます?」
で、必要最低限の確認をすると、オジサンが書類のやりとりみたいなのをしている間にパレットに荷下ろし開始。
積み荷がお菓子だったので軽いから、ちょー楽。
余白を均等にとり、崩れないように高さを抑え、中央に均等に積んで行く。
書類の手続きみたいなのが終わったオジサンが戻って来て、積まれたパレットを見て一瞬驚いた。
んで、近くにあったパレットトラックで奥の倉庫へ運んで行く。
僕は次のパレットを引いて、また積み荷を降ろして行く。
で、10分程で作業終了。
ハーフパンツにマウンテンブーツの普通の格好で荷下ろししているのを不思議に思っていたらしい。
作業が終わり、助手席にあるバックパックから着替えのTシャツ取り出すのをみて近くにいた別のトラックの運ちゃんが話しかけて来た。
「なに、ヒッチハイクで乗って来たの?」
と驚きと笑いが入り交じった表情で話しかけられる。
「そうなんですよ。帰り道で乗せてもらったんでちょっと手伝いました。」
そしたらもう一人いた他の人も「どっから来たの?」
珍「鎌倉です。」
オ「あー、俺も大学が東京で鎌倉の海はよく行ったなー」
オ「もう30年以上前だけどね。アハハ。」
と、遠い目でしばし思い出を語られる。
運転手のオジサンが納品後の書類の手続きをしている間に敷地内にある自販機でペットボトルを買う。
ヒッチハイクで車に乗せてもらい、そのまま仕事手伝うってパターンは初だな。
こんな感じで地方の産業とかが見られたらそれはそれで面白いかもしれない。
そんなことを思っていたら運転手のオジサンが帰って来た。
珍「次は山口ですか?」
運「もう1カ所ある。」
あ、そうなんだ。
聞いてないけど、まぁいいや。さっきの感じなら余裕だろ。
そう思って次の場所に向かったんだけど、次の場所が手こずった。
到着して作業を始めようかと思ったが、運転手のオジサンが初めて行く場所なので、その場のルールみたいなものを全く理解していないのだ。
どこに荷下ろしすればいいのか、どの台車をつかっていいのか、台車におろしてどこに持って行くのか。
全くわかっていないため、トラックの荷台での待機時間が異様に長い。
時間はどんどん経って行く。
えー、話しと違うじゃないかー。
当初、山口には10時くらいには着くという感じの話だったのだが、未だに福岡県にいて時刻はもう少しでお昼というところ。
しばらく待ちながらゆっくり作業していたけど12時に近くなったあたりで倉庫の人が俺の処に来た。
「12:30でここ閉まっちゃうから早くしないとダメだよ。」
(そんなこと俺に言われてもねぇ。)
なんて答えたもんかと言葉に詰まったが正直に「僕、ちょっとわかんないんですよね。」と答えた。
いぶかしげな表情で倉庫の人は去って行き、少し離れたところで「向こうのトラック終わんないから手伝って!」
そういうと5人くらい集まって来て、僕が降ろした荷物をどんどん捌いて行く。
で、運転手のオジサンがいない間に5分くらいで全ての荷下ろし完了。
倉庫の人は俺の態度にちょっと不満そうである。
恐らく感謝の気持ちが態度に出てないのだ。
(あ、そうか。この人達俺の状況分かってないもんね。)
珍「ありがとうございます。」
とりあえず潤滑油としてのお礼を言っておく。
すると倉庫の人が「今日初めてなの?」と聞いてくる。
どう答えようか迷ったのだが、働いている人たちを見るからにどう見てもパートのオバちゃん達。
問題なさそうな気がしたので
珍「ヒッチハイクで乗ってきました。」
倉「へ?」
珍「さっき拾ってもらったんでお礼に手伝ってるんです。」
そういうと一気に少しこわばっていたオバちゃん達のリアクション
「エェーーーーー」
となる。
ビックリ > 不機嫌
不機嫌リセット完了。
「それで手伝ってるのぉ?」
と回答そのままの質問が帰って来た。
珍「はい」
そうしている間に運転手のオジサンが戻って来た。
僕はここが12:30で閉まってしまうのでみんなが一斉に手伝ってくれたので終わったと伝え、お礼を言うべきだということも併せて伝えた。
オジサンはキョトンとしていたが、素直にお礼を言いに行き、丸く収まった。
よし、これで山口を目指せる。
時間は12を少し過ぎていた。
高速に乗り古賀SAで昼食。
多分オジサンは奢ってくれるつもりだったっぽいけど、自分の食べたいものがあったので別で会計した。
僕は乗せてもらったにも関わらず、荷下ろしに時間がかかったことに少し苛立っていた。
それというのも出雲大社に行きたいと思っていて、今日中に近くに辿り着きたいと思っていたのだ。
出雲大社に行くには経験から考えると5台くらいは乗り継ぐことになるだろう。
そうすると朝の4時間あまりのロスは痛すぎる。
田舎の一般道で夜に車を拾うのは難しいので、明るいうちに距離を稼いでおきたかったのだ。
昼飯を食べ終わった頃には頭を切り替え、また会話を始める。
仕事は終わったのだ。山の話をしたりしながら本州入りし、美東SAに辿り着く。
時刻は15:00
(結構かかったなぁ。)
ヒッチハイク中に荷下ろし作業をするという特異な体験をしたことを思い返しながらお礼を言って降ろしてもらう。
ここから出雲大社に行くにはいろんなルートが考えられなかなか難易度が高い。
おそらく東側から向かうほうが行きやすいんじゃないかというのが地図を見ての感想。
で、バックパックにボードを立てかけたまま、アサラト振りながら待っている。
しばらくして60歳くらいのご夫婦が話しかけてくれる。
下関のほうへ旅行に行っていて倉敷に帰るらところらしい。
たぶん中国自動車道に行ったほうがルートとしては正しい。
でも少しでも距離を進めようという気持ちもあって結局山陽自動車道で倉敷方面に乗せていってもらうことにした。
旦那さんは絵を描かれるそうで北海道のふらのがとにかく好きらしい。
こんど銀座でも個展をやるらしい。
そんなこんなで話していたが何処で降ろしてもらうかを決めていない。
後から考えると別の場所のほうが良かったんだが、高速分岐前のSAということで宮島SAで降ろしてもらうことにした。
時刻は17:15
道が1本じゃないだけにかなり厳しい展開。
すぐにヒッチハイクを再開するものの中々つかまらない。
18:00 気分変えるためにSA入る
尾道らーめん
この時はすでに出雲大社は次回かなぁと思い出していた。
もう少し時間があればゆっくり行けてたけど、明後日には鎌倉に帰る予定でいた。
そんな早く行けるの?ってよく言われますが、よっぽど運が悪くなければ可能です。
ただし、相当消耗します。ヒッチハイクには終電がありませんからね。
らーめんを食べながら考えてたんだけど、宮島に行ってもいいかなぁって思い出した。
宮島は初めてのヒッチハイク旅の時に行ったけど、その時はご朱印集めてなかったんですね。
で、あそこはマイ・ベスト・オブ・ジンジャーズに加えるべきところだし、御朱印貰って帰ろうと。
そんなわけで宮島SAからした道に降りてヒッチハイクを再開。
ネットカフェの場所を調べ、そこに向かいます。
交通量が少ないわけではないのだけれど、すでに少し暗くなっていたこともあり中々停まってもらえません。
結局45分ほど歩いてネットカフェ到着。
受付しようとするとシャワーがないとのこと。
まじかー。
シャワーないのはキツい。
で、大胆にも受付で他のシャワーのあるネットカフェの場所を聞く。
そこはここから歩いて50分くらい。
歩けなくはないけどダルい。
っつーことで、ヒッチハイク再開。
大通り沿いだし、1本だからいけるっしょ。
20分程して自信なさげに20代後半のお兄さんの車があまりコチラに寄らずに止まってくれる。
後ろから車が来そうなので、近寄って聞き取れる程度の早口で話しかける。
珍「停まってくれました?、この通り沿いを少し行ったところにあるネットカフェ行きたいんですけど。」
若「そんなのあったかなぁ?」
珍「4kmくらい先の右側にあるんですけど」
そういったところで後ろから車が来た。
若「とりあえず乗って下さい」
走りながら店の名前を言うとなんとなく思い出したようで行ってくれるとのこと。
車の中では、かの「フォルダー5」で一斉を風靡した(?)、大人になった三浦大地君のライブ映像が流れている。
ちょうどABCを歌っていて、こんなに大人になったのね。って思い「これって三浦大地ですよね?」
と聞くと少し照れくさそうに
「好きなんですよねぇ。」
と答える。
きわどいラインだとはお互い思っていたと思いますが、好きなものを好きと言えるのはいいことだと思います。
車だとネットカフェまではすぐに着き、降ろしてもらう。
「ありがとうございました。助かりました。」
10時間パックに今なら2時間プラス。
みたいなプランにして、シャワーを浴びて寝る。
区切りのよくわからない長い一日だった。
続く。
屋久島ヒッチハイク記十日目。宮島上陸、厳島神社観光から兵庫まで。
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