由比ヶ浜海岸へ着いた時、前日の夜明けまで降り続いていた土砂降りが嘘のようにおさまり、雲の合間から晴れ間を覗かせていた。
もう5回目になるヒッチハイクの旅である。
今回の目的地は屋久島。
これまでで一番遠い目的地である。
10日間という短い期間のため、屋久島に着くまでは寄り道せずに向い、帰りに寄れるところにだけ寄ろうと考えた。
スタートはいつもより少しだけ早い10時少し前。
いつもの場所で指をあげて待つこと20分程、ピックアップトラックを運転した女の子が止まってくれ、窓から首を出し、何処まで行くの?と聞いてくる。
近くに駆け寄っていき、とりあえず西の方へ行きたいと伝える。
そう答えると山梨の方へ行くから途中の御殿場付近まで乗せてってくれるとのこと。
同乗していた見るからにイケてる男性2人が助手席を準備してくれました。
ピックアップトラックの荷台にバックバックを載せると助手席に乗り込む。
車には運転していたMさんとその弟のZさん姉弟とBMXライダーのRさんの3人。
なんでも彼らは造園関係のお仕事をしているらしい。
その日はキャンプを兼ねて植物の仕入れに農家をまわる予定で、山梨方面へ向かうところだったとか。
話を聞いていると大きな賞を取ったりしているそうで、そのこだわりと情熱からするに「造園関係」と言ったのは便宜上のものであり、恐らくアーティストに近いアプローチで仕事をしてるんだという印象を持ちました。
3人とも雰囲気がカッコよくて、最初からいい車に乗せてもらえたのは良かったです。
RさんはBMXで沖縄まで行ったことがあるらしいと聞いて興奮。
BMXです。タイヤがちっさくて、くるくる回わったり、飛んだり、跳ねたり、ウィリーしたりするヤツです。
チャリで沖縄ってだけでも疲れそうって思うのにBMXで行くとは。。
ちなみに3週間ほどで着いたそうです。
しかも一緒にいった人はそのまま移住しちゃったとか。笑
予想通り、まわりもいい感じでぶっ飛んでるみたいです。
Zさんは話からするとスケーターらしい。
途中で窓から見えた河川近くの人工物をどうやって攻略するか妄想しているあたり、かなりイケイケのスケーターっぽかったです。
途中、いつも寄っているらしい小田原のジェラート屋さんに連れて行ってもらいました。
Rさんがせっかくなので奢りますよ。と言ってダブルをご馳走してくれました。
味はRさんオススメのミルクと苺のやつにしました。
しょっぱなから有り難すぎです。
このご恩は旅人にお返しします。(お約束)
ちなみにこれ、めちゃくちゃ美味しかったです。
御殿場の近くで降ろしてもらい、さらにサンドイッチまでいただいてお別れ。
とても魅力的で素敵な3人組でした。
降ろしてもらうと東名のインターを目指して徒歩移動。
途中の100円ショップでスケッチブックとマッキーを購入し準備万端。
乗り場の近くでサンドイッチをおいしくいただき、ヒッチハイク再開。
待つこと30分、一向に止まる気配はありません。
時間は大して経っていないのですが、御殿場から東名、しかも名古屋方面に乗っていく車があまり多くありません。
嫌な予感がします。しかも雲行きも少し怪しい。。
これまでのヒッチハイクのうち3回はゴールデンウィークやお盆休みに行っていました。
そのため地方に帰省する車が多かったのです。
しかし、今回は連休でもない平日のお昼過ぎ。
出る前に想定はしていましたが、やはりといった感じでした。
このままではすぐに夜になってしまいそう。
すぐに地図を確認し、プランを変更、国道1号を目指して徒歩移動することにしました。
そこそこ距離はありましたが、後方から来る車に親指を見せながら徒歩移動開始。
途中、一瞬だけパラパラと雨が降ってきましたが、すぐに止みました。
そして2,3km歩いたところでしょうか。
軽ワゴンが止まってくれます。
止まってくれたのは丸顔で少しムスっとした顔の恐らく40代後半から50代前半の大工さんで、今日はたまたまお休みでドライブしていたらしいです。
国道1号に出たいと言うと沼津まで行ってくれるとのことで乗せていただきます。
もう少し仕事が落ち着いたらバイクを買って日本のいろんなところに行きたいと言っていました。
そんなこともあって僕のことを乗せてくれたのかも知れません。
実はこの人、一度やり過ごしたんですよね。
というのも商店みたいなところの前で停車していて、タイミングと場所的に停まってくれたのかどうかの判断がつきませんでした。
一応確認のため、チラッとみたら目を逸らして知らんぷりしてたんです。
なんでしょう恥ずかしくなっちゃったのか、見定めしようとしたのか。
乗せるほうも少しの覚悟が必要なんでしょうね。
沼津の国道1号から少し離れた大通り沿いで降ろしてもらいます。
降りる間際、彼はなぜか財布から1000円札を出して、「これでなんか食べて」と手渡してきます。
車内の会話の中で特に貧窮しているなどの印象を与えるような話はしていないので、とてもビックリしたのですが、僕はそれを受け取ることにしました。
それは彼の思う「粋」なはからいであり、それを断ることで彼の気分を害することは、乗せてもらったことに対する不義理のように感じたからです。
丁寧にお礼を言ってお別れします。
彼の軽ワゴンはすごい加速をして去っていきました。
国道1号まではまだ少しあるのでトボトボと歩いて移動します。
30分ほど歩き、国道1号沿いに出たものの、その辺りは片道3車線で車を停めるのが難しいところでした。
国道1号沿いを西に歩き、ようやく駐車場のある牛丼屋を見つけ、ヒッチハイクを再開します。
ここは車通りも多いけれど、駐車場があまり大きくなく、速度を出している車も多かったので、停めるのがなかなか難しかったです。
結局1時間半ほど経ったところで1台のワゴンが通りとは逆の入り口から牛丼屋の駐車場に入ってきました。
こちらを見ながら徐行してくるので、戻って来てくれたのだとわかり、近寄ると会社に戻るところなので乗せてってくれるとのこと。
彼は足場屋さんの営業をしているそうです。
いろんな職種を転々としたそうでアダルトDVDなどを扱うお店に置いてある出会い系プリペイドカードの営業など、少し変わった仕事をしていた話も聞きました。足場屋さんの営業とは難しそうですね。と聞いたところ、不動産の営業をしていたころに比べればノルマが楽であるのと、通常、営業職がいない業界のため、営業職として動いているインパクトは結構あるそうで、順調らしいです。
「どこで降ろせばいいですかね?」
目的地までの距離と日程の関係から、初日は大阪まで行きたいと思っていました。
時刻は17:30を過ぎたところ、暗くなってから停まってもらうのはとても難しいです。
した道でこのまま西を目指すか、長距離移動の可能性のある高速か。
結局、東名の藤川SAの規模がそこそこ大きいとのことと、外から出入りできるとのこと、時間帯などを考えて高速を使って西を目指すことにしました。
18:00少し前、藤川SAに入る階段の下にある一般道沿いで降ろしてもらいます。
歩いて階段を登るとスタバが見えてきます。
スタバがあると一定の規模感と清潔感が担保された気がして、少し安心します。
これはブランドの力のひとつだと感じました。
家を出てから、いただいたサンドイッチしか食べていなかったため、SAでラーメンセットを食べることにしました。
この時点では充分大阪入りを狙えるし、その前に腹ごしらえといった感じでしたが、この後が長かったです。
ずーっと外で「名古屋方面」って持って待ってたんですが全然乗せてもらえません。
20:00、21:00、22:00と時間が過ぎ、23:00を回った頃には
「ここで朝まで過ごすことになるかもな。まぁそれもいいだろう。俺は自由なんだし。」
と、諦めと言うには潔く、悟りというにはシンプルすぎる発想で長いベンチに寝転がりました。
途中パラッと雨が降りかけ、ヤバっと思ったらそこのベンチの上には稼働式の屋根があることに気がつき、屋根を拡げます。
ストッパーのボタンを押しながら引き下げると立派な屋根が。
テーブルと長いベンチあるし、屋根もあるし。これ、朝まで余裕じゃん。
完全な寝支度ではないけれど、エアピローを拡げ、横になりぼーっとしてました。
念のため、テーブルの上にバックパックを置き、SAに寄った人に見えやすい角度で名古屋方面と書いたスケッチブックを立てかけて配置します。
焦っても仕方ない、早朝になれば状況は変わる。
そんな気持ちで眠れないけど横になり、しばらく過ごしてました。
そうしている間にいつのまにか日付は変わっていました。
続く。
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