[映画] 偏屈老人とアジア人少年を通して見るアメリカ『グラン・トリノ』

2016年5月23日
2017年5月16日
gappacker
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グラン・トリノ
phpto credit lrumiha

クリントイーストウッド主演監督作品

評判がいいのは知っていたけど見ていなかった映画『グラン・トリノ』を観てみました。
監督はクリント・イーストウッドで、主演もつとめています。

あらすじ

妻を無くし、息子達とも疎遠のまま過ごしている元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、ある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、隣に越してきたアジア系移民であるモン族の少年タオとその姉と知り合い、無骨で不器用ながらも少しずつ心を通わせていく。

予告編はこちら

映画を見た感想

クリント・イーストウッドが演じるウォルトっておじさんは、頑固で偏屈者で、軍を退役したあとはフォードの車を販売していて年金暮らし。今だったらトランプを支持するようなゴリゴリの共和党支持者で全米ライフル協会の会員というような感じの、いわゆるアメリカ・イズ・ナンバーワンなマッチョイズムを体現したような人物。差別的な言動は平気でするし、たぶん知り合いになるまでは普通に付き合いたくない嫌な感じのアメリカ人のオッサン。

疎遠になってる息子は日本車販売して儲けてるみたいだし、舞台となってるミシガン州の町には黒人のチンピラがのさばってたり、近所の白人は減って、よくわからないアジア系の移民が増えてる。信仰心なんてもんはとうの昔に捨てたし、信じられるのは自分だけ。

一方で、その言動や立ち振る舞いの裏には朝鮮戦争を経験して人を殺めてしまったことへの苦悩や、PTSDを抱えているかもしれないんだけど、それを認めるわけにはいかないし、助けを求めるなんて許されないマッチョイズムな外面みたいなものもあったりして、ただの嫌なオッサンではなくて、とても人間味があるんですよね。そして、この役がクリント・イーストウッドにぴったりハマってるというか、クリント・イーストウッドだから演じられたのかというくらい完璧なんです。ともすれば単調になってしまいがちな特筆すべきことがないストーリーを、ここまでのヒューマンドラマとして撮れるのは、クリント・イーストウッドの監督としての手腕が素晴らしいからなんだと思います。

舞台となっているミシガン州ですが、かって自動車産業で栄えたものの、日本車台頭の影響によってGMの工場が閉鎖したりするなど、地域経済と治安が悪化したというエリアでもあります。マイケル・ムーア監督のデビュー作品である『ロジャーアンドミー』はミシガン州フリントにあるGMの工場に関する内容なのでこの辺を見るとなんとなく理解が深まるかもしれません。そんなミシガン州も移民流入によって町の人口や人種の割合なんかも様変わりしいき、この映画でも変化せざるをえない古きアメリカの今を描いてるようにも思えます。そうは言っても移民の国なので変化はし続けてるんでしょうけどね。

こういう映画を撮るのって勧善懲悪ものの作品を撮るのとは段違いで難しいんじゃないかとか思うのですが、久しぶりにいい映画を観たと思いました。
素朴な疑問なんだけど、こういう映画って黒人の人とかヒスパニック系の人は見るんでしょうかね。ちょっと気になります。

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