自己啓発本の古典
自己啓発本というジャンルは、ビジネスや宗教的要素が絡んだりすることも多く、なかなか胡散臭いジャンルであるし、著者に対する疑念ばかりが浮かんでしまったり、一つ間違えれば詐欺と思えるものさえある。自己啓発本ばかりを読んでいると思われるのは絶対に避けなければならないし、読んでいるのを知られてしまったりすると、ものすごく気恥ずかしい思いをする。
そんな常に際どい立ち位置にある自己啓発本を、それでも手に取ってしまうのは、少しでも自らの人生をプラスに変化させたいという根源的な欲求が僕にはあり、同じように他の人にもあるものなのかもしれない。
この本は19世紀のアメリカを代表する思想家、ラルフ・ウォルドー・エマソンによる論文集の中の『self-reliance』の全訳であり、自己啓発本としては古典として有名な本である。時代を越えて読み継がれ、指示されるのにはきっと訳があるはず。そう思い、読んでみることにした。
読んでみて
まず、驚いたのが、古典にありがちな古くささを全く感じさせない本だということ。
これはひょっとしたら翻訳者の腕による所もあるのかもしれないが、とにかく普遍的な物事について思索の結果を綴っている。
古典といえば僕はジョン・スチュアート ミルの自由論から衝撃を受けたのだが、『自由論』が自由を考える上で、政治や社会構造などについて言及しているのに対し、この本のテーマはもっと身近な生き方や考え方といったところにある。
それは世の中に溢れている形式ばっただけの意味をなさないことに従うのではなく、自分の頭で考えて行動するというものすごいシンプルな当たり前の考え方でありながら、多くの現代人が失っている部分でもある。
常識だから、ルールだから、風習だから、前例がないから、といった具合にである。
今となってはこのような生き方を実践している人もいるだろうし、自分もそうありたいと思ってる部分に近いものがあるのだが、この本が書かれたのは160年以上前。聖書や教会の教えに対して盲目的に従っているような人々を否定することを恐れないスタンスで書かれていることは驚きである。
まったく人生における体験というやつは『もっとはやく○○しておけばよかった』の連続なわけだけど、この本も『もっとはやく読んでおけば良かった』と思う本だった。体験したタイミングでそう思えることが素晴らしいことなのだと諭しつつ、古典の威力を思い知らされた1冊でした。
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