[書評] 機械に仕事が奪われる?『機械との競争』

2014年7月16日
2017年5月16日
gappacker
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
機械との競争

いよいよ表面化する予測していた未来

リーマンショック後の大不況により、アメリカの雇用統計は悪化して失業者が溢れた。
そしてその後、景気が回復したものの、雇用は回復しなかった。
それはなぜか?

それは単なる景気循環による不況ではなく、構造変化によるもので、機械によって労働が置き換わっているからだという。過去に描かれた悲観的な未来が現実のものとなりつつあるというショッキングな現状認識から、この本は始まっている。

テクノロジーの進化のスピードが早まっている

第2章では、あらゆる分野でテクノロジーの進化が加速していて、それがただのSFの話ではなく、いたる所で現実に起き始めていると述べている。
テクノロジー失業と呼ばれるもので、労働力を節約する手段が、その労働力の新たな活用先を見つけるペースを上回って次々に発見されていることから生み出される状況にある。

従来では難しいと考えられていた複雑なコミュニケーションや高度なパターン認識を伴う仕事でも機械化が進み、人の仕事が奪われているのだ。

テクノロジーの進化による雇用の破壊

第3章ではさらにテクノロジーの進化が雇用を破壊している点について、三種類の傾向に触れている。
一つ目は高スキルの労働者vs低スキル労働者
二つ目はスパースターvs普通の人。
三つ目は資本家vs労働者である。

そこから導きだされた傾向は

・高度なスキルを持つ人材に対する需要が高まり、賃金格差が拡がっている。
・少数のスパースターが圧倒的な報酬を受け取っている。
・資本家が労働者に比べおおきなパイをとっている

つまり、テクノロジーが所得配分に大きな変化をもたらしたということである。

では、どうすればいいのか。

第4章では、その解決策を提言している。
人間 vs コンピューター vs コンピューターを上手く活用した人間では、コンピューターを上手く活用した人間が好成績を納める。
コンピューターが弱い所に人間は強いため、マシンを敵と見るのではなく上手く味方に付けることが重要だという。
コンピューターにすべてを奪われる心配はないのだ。

そして起業を促進し、新たな産業を生み出すことで雇用を生み出すこと、教育改革を行い人的投資を促進することなどを軸に、教育、起業家精神、投資、法規制、税制などについて19の提言がされている。

結論

悲観的なデータに触れている一方で最後には楽観的な見方をしている。
それは、いつの時代も新たにアイデアを発見する可能性を過小評価しているという点である。
1992年にクリントン元大統領が全米の最高級の頭脳を集め、議論した際にインターネットについて言及しなかったそうである。
つまり、まだ想像していないビッグ・アイデアが生まれる可能性はあるのだそうだ。

読んでみての感想

全体を通して、アメリカ国内のデータや論文が使われているが、当然のことながら他人事とは思えない。
テクノロジーの進化のスピードが新たな雇用を生み出すのを上回っているなか、高度なスキルの需要が供給を上回っている点が深刻視されているのは、去年のCode for Americaの動きにも繋がっているように思える。

直感と創造性は機械が最も苦手とする所であり、例えばWeb制作などにおいても、ツールによって作業はどんどん奪われていくだろう。
それよりは、コンテンツ製作やディレクション能力など機械化されにくい分野のほうが需要としては無くなりにくいのかもしれない。

以前、読んだワークシフトなどと合わせ、今後の働き方などを考えるうえで、備えておくべき視点かもしれないと思った。
[書評] 働き方の未来?『ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図 <2025>』


この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterでgappackerをフォローしよう!

 この記事のタイトルとURLをコピーする