[書評] 革新的な街のプレイヤー達に聞く『ポートランド・メイカーズ』

2017年11月10日
2017年11月11日
gappacker
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ポートランド・メイカーズ

革新的な街で生きるプレイヤー達を通して見るポートランド

ナイキやコロンビア、キーン、ダナー、Polarなどの多くの世界企業が生まれた街としてここ10年くらい雑誌やメディアでも特集が組まれたりすることが多いオレゴン州ポートランド。

本書はそんなポートランドをベースにビジネスを行ってきた6人にインタビューした本だ。人口63万人という小さな街でありながら革新的な街として名を馳せ、多くの世界的ブランドを排出してきた文化的土壌の一端がインタビューを通して見えてくる気がします。

ポートランドを代表するプレイヤー達

インタビューしているのはWieden+Kennedyのクリエイティブデイレクターを経て、ファーストリテイリングのグローバルクリエイティブ統括を努めているジョン・ジェイ、現在ナイキで唯一”エキスパート”の称号を持つ、フットウェアデザイナーの南トーマス哲也、オーガニックの日本食レストランを手がけ、デルタ航空の成田ーポートランド間の機内食を提供している田村なを子、オレゴン産の木材を使用したハンドメイド品を販売するGrovemadeの冨田ケン、サードウェーブコーヒーの生みの親の1人であり、Portland Roasting Coffeeの設立者であるマーク・ステル、そしてスタートアップコミュニティのリック・タロジーといった面々。

それぞれデザイン、飲食、ハンドメイド、スタートアップと、ポートランドを代表する業界で重要な人物たちだ。

読んだ感想

インタビューによる対談形式なのであっという間に読み終えてしまったのだが、読んで感じたことをまとめたい。

以前からポートランドが特集され、注目されているのは感じていたけれど、残念なことに僕はアメリカ西海岸を訪問したことがなく、肌感覚としてその盛り上がりについてうまく想像できていなかった。でも、なぜ人口63万人という決して大きくない規模の街がこれだけ盛り上がるのかって部分はとても気になっていて、それがこの本を読もうと思った理由でもある。

革新的な街の原動力は何か?

ポートランドの人口63万人といえば、日本でいうと千葉県船橋市の人口と同じであり、僕の住む鎌倉市の人口17万人と、生まれ育った隣の藤沢市の人口42万人を合わせた数とほぼ同じくらいの規模になる。つまり自分の生まれ育った湘南エリア内に、前述したような世界的ブランドがひしめいていて、街中に面白そうなお店が沢山あるのと同じような感じらしい。

広さを単純比較するとポートランドが375.5km²、鎌倉市が39.6km²、藤沢市が69.57km²と、合計しても3倍強の広さはあるので、実際にはもう少しゆったりしているのだろうが、実際に想像してみただけでワクワクすることは確かだ。

著者の山崎満広氏は街のクリエイティビティを生み出す要因として、プレイヤーのマインド(気質)と、彼らを取り巻くコミュニティ(土壌)にあるとしている。

プレイヤーのマインドの共通点

  1. 自信を持っている
  2. 失敗を恐れずやってみる
  3. 挫折から学び続ける
  4. お金や名声以上に仕事が好き
  5. 独立心が強い
  6. 変化を受け入れ成長する

コミュニティの共通点

  1. 仲間が集まりやすく、新たな関係を築きやすい「場所」を持ってること
  2. フェアでカジュアルでフラットな組織や文化があること
  3. 新しいアイデアを歓迎し、良いと思ったことを素直に受け入れること
  4. わからないこと、困ったことは、専門家や同業の仲間に助けてもらうこと
  5. 良いこと、うまくいったことは、たとえライバルであっても、どんどんシェアすること
  6. ライフスタイルを大事にして趣味の時間を充実させること

ではこれらの土壌がいかにしてつくられ、そのようなプレイヤーが集まったのかという点については考察するに十分な見識を持ち合わせていない。

それはひょっとしたら高城剛がクーリエに寄せたコラムポートランドに見る米国の”ダークサイド”突入に書いているように、その反映の根底にはフリーメーソンやサイエントロジーなどの力が一定の役割を担っていたのかもしれない。現にアウトドアブランドであるPOLeRのロゴマークなんかは三角形に目玉のモチーフを使用するなどイルミナティをダイレクトに想像させるもので、あながち間違いではないのかもしれない。ただし、それだけが理由かと言われればそうではない気もするし、時代や立地的な条件も深く結びついているのではないかと思う。

ブームは終わりの始まりか?

近年のポートランド特集を見ていると、どうもブームの最高潮にあるような気がしてならないのは確かだ。
かつてのニューヨークのSOHO地区やイーストヴィレッジ、そしてベッドフォードのようにアーティストなど尖った感性を持つ人達が集住して魅力的なエリアができ、それに目をつけた資本が入りだした途端に地価が高騰し、もともとその土地の多様性や価値を上げていた人たちがそこを後にするという流れと、理想郷を目指して流れ込む移住者によって魅力が薄まるという問題が同時に起きる可能性はあるだろう。現に本書のなかでも冨田ケン氏が家賃の高等について言及しているし、ホームレスの増加による非常事態宣言が出されていることからも、同じ轍を踏むことになるのかもしれない。

まとめ

街づくりを考える時にポートランドはロールモデルのひとつとして今後も取り上げられ続けるとは思う。
ただ成功した部分を表面的に捉えてるのではなく、その根底にある要因を慎重に探らないといけないのかもしれない。

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