[書評] ニホンに暮らすガイコクジン『ニッポン異国紀行』

2016年1月26日
2017年5月16日
gappacker
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ニッポン異国紀行

日本国内の異文化に目を向ける

この本はノンフィクションライターの石井光太氏が、遺体の冷凍空輸や、韓国系教会によるホームレス支援、結婚紹介所、占い、風俗や水商売に関わる女性達の日常など、日本人が普段意識することのない外国人の日本での生活を、宗教や医療、風俗など様々な方向から取材した本です。

外国人が日本で亡くなったら

1章は「生死」について。
日本にいると意識することは少ないが、宗教によって埋葬の方法は異なる。
外国人が日本で亡くなり、宗教上の理由で火葬などが禁じられていた場合、祖国に遺体のまま送り返す必要性が出てくることがある。隣国ならともかく、長時間のフライトでは、遺体が腐敗しないように特殊な措置を行わなければならない。
その防腐処置技術をエンバーミングといい、エンバーミングを行える人をエンバーマーというらしい。では、誰がどのように手配し、どういう手続きを踏まえ、どのように祖国へ遺体が送られるのか。
日本で亡くなり、日本のお墓に入ることはあるのか、あるとすればどこにあるのか。費用はどうするのか。

夜の世界の女性たち

2章は「風俗や性愛」について。
水商売や風俗など、バブル期に大挙して押しかけたタイ人やそれにとって変わって入ってきた韓国人たち。
時代によって変化した彼女達を取り巻く環境や、ビジネスを管理する裏社会の人たち。

宗教

3章は「信仰」について。
日本にある韓国人のキリスト教会はどのような背景で生まれ、ホームレスを支援するに至ってるのか。
歌舞伎町にある多国籍な占い師達はどのような生活を送っているのか。

医療はどうしてるか

4章は「医療」について。
異国の地で外国の人が病気になった時どうしているのだろうか。
不法滞在者の場合は、その発覚を恐れ、手遅れになるほど症状を悪化させてしまうことは少なくない。

読んだ感想

海外の文化や習慣などを知りたいと思った時、多くの人は海外旅行などその国に滞在することでその国を知ろうとする。それに対して日本にいる外国人の暮らしに目を向けようとしている人はあまり多くないのではないか。正確には、外国人として興味をもつ対象が一部の人種に偏っていて、東南アジアや南米の人たちと積極的に関わっている人がそれほど多くない印象はある。

この本を読んでいて感じたのは、グローバリズムという言葉だ。
日本国内に様々なバッググランドを持った人たちが増え、彼らのコミュニティが出来上がっていく中で、日本人がどう向き合い、どう付き合っていくのか。アメリカを始めとする金融支配の枠に加わるのではなく、草の根の付き合いや、相互理解が進むことこそにグローバリズムの本質があるように思えた。

読んでいて知らない街を訪れているような感覚になる。
日の当たらない場所に目を向けた本という意味で、以前、紹介した下の2冊とちょっと似ている。興味のある方には読んでもらいたい。
[書評] タブー視され封印されつつある日本の側面を知る『日本の路地を旅する』
[書評] 東京からはじめるディスカバリージャパン『東京番外地』

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