[映画] ほんとうの悪は意外と身近なものなのかもしれない『アクト・オブ・キリング』

2014年4月19日
2015年12月2日
gappacker
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映画を見る前の基本知識として

1965年スカルノ政権時にインドネシアで起きたクーデター。
自体を沈静化させたスハルノは影でクーデターを操っていたのは共産主義者だとし、120万人とも言われる人々が虐殺された。虐殺を行っていた側の人間は今も英雄としてインドネシアの政治に深く根ざしている。

狂気の沙汰という言葉では片付けられないほどの悪

この映画は、当時虐殺を行っていた人々が当時を再現した映画製作を行う様子を撮影したドキュメンタリー映画で、今までに見たこともないような手法が取られています。虐殺を行っていた側の人間が笑顔で残虐な行為を再現し、それを誇らしげに騙っている。狂気の沙汰という言葉だけでは片付けられない、どう反応すればいいのかわからないほど、体験したことのないような”「悪」が、包み隠さず、そのまま映し出されているのです。

揺らいでいく確信。この人達は本当に狂ってるのか?

最初のうちは、狂ってるとしか思えない彼らの言動に、ただただ唖然とするばかりでした。
しかし、彼らにも普通に家族がいて、孫がいて、時折見せる人間くささというか、普通の人っぽさに、実はそこにいるのは自分たちとあまり変わらない人なんじゃないか?
「向こう側の人」だった筈で、自分とは違う、一線置きたい筈の彼らが、実は隣人、ひょっとしたら自分とそう変わらない人達なんじゃないか。そう考えだすと、自分が正常だと思っている感覚がとても危いもので、薄い氷のうえになんとか立っているにすぎないのではないか。そんな得体の知れない自らに対する疑念のような、何とも言えない恐怖感すら覚えるのです。

彼らは下品で、教育レベルが低く、知性を感じるさせる要素はないのですが、いわゆるサイコキラーなどではなく、居酒屋で大声で低能なことを言ってるような普通のおっさん達、もしくはその辺のチンピラなんです。
そんな人達が臆する事も、恥じる事もなく、自らの虐殺行為を高らかに語りだす。

イデオロギーが狂信的になることは多々あると思いますが、ここでは共産主義者(真否は問わず)の殺戮は正当化される(もしくは正当化せざるを得ない)という反イデオロギーが狂信的になっているようなのです。

自分がこの環境にいたらどうなっていたんだろうか?
同じように、危険な思想である共産主義者を虐殺していたんだろうか?
それとも疑問の声を上げ、共産主義者というレッテルを貼られ、処刑されていたのだろうか?
生き残るのを優先して口を噤み、ただ見てみぬフリをするんだろうか?
映像を見ながら、湧いてきた嫌悪感や疑問、整理がつかないままの感情がいまも脳にまとわりついたままです。

当時の世界情勢

1965年といえば前年に起きたトンキン湾事件からベトナム戦争が激化し、北ベトナムへの爆撃が始まった年です。
世界は米ソのイデオロギー対決のまっただ中で、中国では毛沢東による文革がおき、多くの知識人が処刑され、カンボジアやラオスにもアメリカ軍が空爆し、その後カンボジアではポルポトのクメール・ルージュが勢力を伸ばし、各地のキリングフィールドでの大虐殺に繋がっていきます。

この映画ではあくまで虐殺のことがメインになっているため、あまり触れられていませんが、クーデターが起きて、共産主義者が首謀者だとして粛正が始まる。裏で糸引いてるのは当然あの国でしょう。ドミノ理論とは虐殺の連鎖のことなのかと思ってしまいますね。

この激動の時代に我らが日本は一体何をしていたのでしょうか。
ベトナム戦争が激化し、インドネシアでは虐殺がおき、中国で文革がおき、カンボジアで内戦が起こっていたとき。

日本にはビートルズが来て、ツイギーが来て、大阪万博をやっていました。

これ、笑えないです。
近隣諸国で空爆や殺戮が常態化している中、日本は戦争特需で稼いだお金でパーティーやってたんですよ。
もう完全に高度経済成長という欲に浸かってしまっていますね。対岸の火事というか、他人事というか、巨大な欲に飲み込まれてしまっていたんでしょうね。
そう考えると大阪万博もメリケンプロデュースで行われた西側資本経済体制の成功モデルとしてのショーケースだったんでしょうか。

当時のことは知りませんが、ベ平連などの動きもあったようですし、もちろん関心を持っていた人もいるでしょう。
僕も10年ほど前にベトナムのハノイにある戦争博物館で、当時の赤旗がベトナム戦争を報じ、非難している記事が展示されてるのをみました。でも比較した時にあまりに温度差がありすぎますね。。

当時の年表を一部wikipediaから引っ張ってきました。
1964年8月 – トンキン湾事件
1965年2月7日 – アメリカ軍による北ベトナム爆撃
1965年3月8日 – 米海兵隊、ダナン上陸
1965年4月24日 – アメリカの北爆に反対し小田実らが「ベトナムに平和を!市民・文化団体連合」(ベ平連)を結成。
1965年6月22日 – 日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約締結(通称・日韓基本条約)、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定締結。
1965年9月30日 – インドネシアでクーデター未遂(9月30日事件)。
1965年12月10日 – 日本、国際連合安全保障理事会の非常任理事国に当選。
1966年 – 中国で文化大革命が始まる。
1966年6月29日 – ビートルズ来日(6月30日から3日間日本武道館で公演)
1967年8月8日 – 東南アジア諸国連合(ASEAN)結成。
1970年1月 – リチャード・ニクソン大統領就任
1970年3月1日 – アメリカ軍、嘉手納基地を新たな輸送戦略基地に決定。
1970年3月14日 – 日本万国博覧会(大阪万博)開幕( – 9月13日)。
1970年3月31日 – 日本航空機よど号ハイジャック事件発生。
1970年4月 – 南ベトナム軍とアメリカ軍がカンボジアに侵攻、カンボジア内戦勃発
1973年 – アメリカがベトナムから撤退

インドネシアの未来

今後経済発展が見込まれるASEAN諸国の中でも注目されているインドネシアですが、このような過去をちゃんと清算できるんでしょうか?それとも経済発展により過去の負債を飲み込むつもりなのでしょうか。

そして日本は自ら過去を見直し、清算できる日が来るのでしょうか?

目を背けずに、とにかく観て欲しい

この映画は事実ですが、はっきり言って救いがありません。
勧善懲悪ではないし、多くの残虐な行為をしていた人達が裁きを受けることなく、今も普通に生活しています。
このような映画を観ることで、平和ボケしてしまっている日常から、平和や国家、政治などについて考えてみてもいいのではないでしょうか?

アクト・オブ・キリング公式サイト
http://www.aok-movie.com/

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