[書評] 業界を変えた不動産屋さんによる働き方と組織論。『だから、僕らはこの働き方を選んだ』

2014年7月7日
2017年5月16日
gappacker
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だから、僕らはこの働き方を選んだ

面白い不動産屋さんの働き方

東京R不動産といえば、今や誰もが知っているユニークな不動産屋さんである。
従来の不動産屋であえば扱いに困るような少し変わった物件を、異なる切り口で分類してユーザーに紹介することで、既存の物件情報に飽きていた多くユーザーの支持を集め、あれよあれよという間に大人気の不動産屋になった。

この本は東京R不動産のワークスタイルが確立するに至った経緯とその理由が書かれている。

そのベースとなった考え方は4点。

1. やりたい仕事をすること
2. ちゃんとお金を稼ぐこと
3. 社会を豊かにすること
4. 楽しい仲間と働くこと

そして彼らが選択したのがフリーエージェント・スタイルという働き方だった。

今やフリーエージェント・スタイルと言えば、与沢翼によってかなり胡散臭い言葉になってしまったが、もともとはダニエル・ピンクの『フリーエージェント社会の到来―』によって社会構造や働き方が大きく変わりつつあることに言及した本から広まった言葉である。組織に所属せず、個人がプロジェクト単位で契約を結びながら、チームとして自分のやりたいことを実現するための働き方のことだ。

自由な会社で大事にしていること

フリーエージェントという働き方の場合、結果が出なければ収入はゼロである。
そのため、働き方など各自の裁量に任される部分は多い。自由にやれる部分は多いが、結果がでなければそれまでなのである。

そんな中で面白いと思ったのが、原宿のオフィスにおいて、座席はフリーアドレスではなく、あえて固定にしたうえで、椅子の選択のみ自由にしているというところだ。個々人において優先度が異なり、個性を表現するものにもなる椅子の選択を自由にすることは、個性的な不動産を各自のセンスで紹介したりする業務内容に共通する部分がある。
その一方で、しっかりと決めごともしている。
これは個人事業主の集まりでありながらも、チームへの帰属意識を持たせる手法として絶妙なバランスを保っているように思える。
適時、ルールが生まれているようなので、柔軟性のある組織になっているのだろう。

読んでみての感想

僕が東京R不動産を知ったのは2006年か2007年くらいのことだったと思う。
著者の1人であり、東京R不動産のディレクターの1人でもある馬場正尊氏の特別講義がデザイン学校であった。
馬場さんは学生結婚をしているのだが、当時は金がなく、コンペの賞金で食いつないでいたという話や、博報堂に入った話、自身の経歴の話から、東京R不動産立ち上げの話などがあった。
なかでも東京R不動産の存在と、その試みは、スクラップ&ビルドに疑問を感じていた僕にはとても魅力的に思えた。


その後、メディアに取り上げられるなど、露出も多くなり、誰もが知るような不動産屋になるまで、それほど時間がかからなかったように思う。

余談だが、僕はその時の講義で情報は発信する人のもとへ集まるから、情報はどんどん発信したほうがいいと馬場さんがおっしゃっていたことが強く印象に残っていて、それ以来、情報は出し惜しみするのではなく、積極的に発信するようになった。
誰しもが、様々な物事から影響を受けているとは思うが、僕も少なからず馬場さんの言葉に影響を受けたわけである。

この本が出てからすでに結構時間が経っているので、その変化や成長のスピードからすると、彼らの働き方は、もっと違った働き方になっているかもしれない。東京R不動産という存在がいることで、スクラップ&ビルドの流れが見直され、古き良き建造物を再利用するという認識が生まれ、広まったように思う。今後も街を面白くしていってもらいたい。フリーエージェント・スタイルで。


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