やっと読めたものづくり関係者必読の本
随分前に図書館で予約して順番が回って来て、半月以上前にも読んだにも関わらず、下書きのままなかなか公開できていませんでした。
半年以上前に話題になった本ですね。
ご存知の方も多いかもしれませんが著者のクリス・アンダーソンは『ロングテール』や『フリー』などの著者としても知られている『ワイアード』の編集長です。
彼が何者かというのを定義するのは難しいところですが、世界で起きている大きな変化の流れを感じとり、これまでに培ってきた知見に基づいて精度の高い近未来予測を発信できる数少ないジャーナリストであり、同時に起業家でもあります。
本書はいわゆる最近何かと話題になっているレーザーカッターや3Dプリンターブームの火付け役となった書籍で、メイカーズムーブメントという、ものづくりにおける時代の転換点となるべき世界で起きている事象などをまとめたものです。
そこそこボリュームのある本ですが、読んでおいて良かったですし、もっと早く購入して読んでも良かったと思える内容でした。
製造業やものづくりに携わっている人は読んでおいたほうが良いのではないでしょうか。
あらたな産業革命は起きるのか?
この本の発売後、雑誌やメディアによる今にも新たな時代の産業革命が起きるかのような類いの煽り記事をよく見かけました。
今となっては、そのような過熱報道もひと段落した感はありますが、僕にはそれがいつか通った道のように思えてなりません。
世間がIT革命というキーワードを連呼し報道した2000年前後。
その当時、本当の意味でIT革命を享受し、実感できた人がどれだけいたでしょうか?
もちろんあったと主張する人もいるかも知れませんが、それはIT革命が起きた結果としてのものではなく、インフラ整備等による恩恵などが大かったのではないかと思います。
IT革命という言葉だけが一人歩きして騒がれた2000年前後よりも、個人的には2010年以降の変化のほうが実際に世の中にもたらした変化は大きいのではないでしょうか。その背景にはスマホユーザーが増えた事や、PCの普及などによるインターネット人口の増加、そして物理的にインフラの整備が進んだ事、そしてSNSの拡がりによる情報プラットフォームの拡がりなどにより情報の拡散性が高まったことなどがあると思いますし、メイカーズムーブメントも同じよう時間をかけて成熟していくもので、今日明日で新たな産業革命が起きる事はないでしょう。
デジタルファブリーケーションによるDIY人口の増加とツールの低価格化、そしてITインフラの整備が整ってることから、産業構造が大きく変わるのは間違いないと思います。ITという情報基盤を手に入れた現代において『新たな産業革命』は30年、50年というスパンではなく、5年、10年というスパンで目に見える変化が起こりそうです。
本書の内容と構成
本書の目次
第1章 発明革命
第2章 新産業革命
第3章 未来の歴史
第4章 僕らはみんなデザイナー
第5章 モノのロングテール
第6章 変革のツール
第7章 オープンハードウェア
第8章 巨大産業を作り替える
第9章 オープンオーガニゼーション
第10章 メイカーズの資金調達
第11章 メイカービジネス
第12章 クラウド・ファクトリー
第13章 DIYバイオロジー
第一部 革命 (第1章〜第5章まで) のという部分で過去から現在で起きてきたことに触れられていて第2部 未来 (第6章〜第13章) で異なる業界における未来について触れられています。
第2部の部分では第6章でツール類の話、第7章ではデータを公開してハードウェアの開発を進めていくオープンハードウェアという考え方について、第8章ではテスラモーターズを初めとした新たな自動車業界の動きについて、第9章では新たな会社組織について、第10章では資金調達の面でメイカーズをささえるクラウドファンディングなどの動きについて第11章ではビジネスを行って成功している事例の紹介、第12章では個人が工場やサプライチェーンを利用できるようになった環境について、そして第13章では生物学者などによる手作り実験機器などによって市販のものの1/10程度のコストで高機能な実験機器をつくる話にふれています。
町工場の人やブルーワーカーにも読んで欲しい
アジア圏の低コスト競争に巻き込まれ苦戦している技術力のある会社には起死回生のヒントとなる可能性もありそうなので、町工場の人や職人さんなど、普段デジタルにあまり関わりがない人にこそ読んで欲しい本です。
併せて読みたい本
日本におけるデジタルファブリケーションの第一人者、慶応SFCの田中先生による著書『Fablife』。
デジタルファブリケーションやFablab界隈の話などとても興味深い内容です。
本書の第13章辺りの情報を知りたければ『バイオパンク』がオススメです。
SFのような時代がすぐそこに迫っていることを感じさせ、読んでいて畏怖の念を感じながらも興奮してしまう良書です。
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