[書評] どこか懐かしく物悲しい写真ルポ『総天然色 廃墟本remix』

2016年1月18日
2017年5月16日
gappacker
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廃墟本remix

懐かしくも物悲しい廃墟をめぐる

廃墟となってしまった施設などの写真と、その背景を説明している本「廃墟本」シリーズの文庫版。紹介されているのは、かつて日本の近代化を支えた鉱山で栄えた場所であったり、高度経済成長期に建てられ、採算が取れなくなったテーマパークやリゾート施設、そして過疎化などの理由によって存在意義を失ってしまった学校や病院などの公共施設などで、荒れ果てた写真からは、どこか懐かしさや哀愁を感じさせられる。

読んだ感想

本書に紹介されている廃墟は、治安面や景観などの面からすでに取り壊されているものばかりである。廃墟は自然と廃墟になったわけであり、計算的にできるものでも作られるものでもない。それは時代にそぐわなくなり、社会から見捨てられ、淘汰された『結果』として生まれたものなのだ。
産業遺産として残すべきだったのではないかと思えるものがある一方で、悪趣味としか言えないようなものや、作られた経緯や背景がいわくつきものもある。しかし、そのようなものでさえ、成長期の混乱に乗じたその時代でしか生まれないような昭和の古い豪快さを感じたりする。

廃虚の多くは地方にあることが多いようだ。
都心部では権利問題などで揉めていない限り、土地の再利用が進めやすいためだろう。文化的価値があっても経済的な理由で取り壊されてしまうことも少なくない。

都心に現存する高度成長期からバブル経済期に建てられた多くの建築物もすでに耐用年数が近づいていたり、耐震構造基準を満たしていないものが多い。人口の減少などの影響もあり、今後スクラップする必要のある建物もどんどん増えて行くのだろう。

壊されることを考えずに建てられ、廃虚となった多くの建物。
写真を眺め、文章を読んでいるうちに、そろそろスクラップ・アンド・ビルドをやめ、役目を終えた後の役割を考えて建てる時代になるんだろうと思った。人口推移やこれからのライフスタイルを考慮して建てられる建築はどのようなものであるべきなのだろう、古い建物はどのように再利用できるのだろう。何を未来に残すべきなんだろう。

これらの廃虚にこそ、いわゆるサステイナブル建築に関するヒントが詰まっているような気がした。きっと今頃、中国あたりは未来の廃虚を量産してるんだろうなぁ。

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