左と右の対談本『愛国者の憂鬱』

2015年2月11日 gappacker
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愛国者の憂鬱

ミュージシャンの坂本龍一と鈴木邦夫による対談をまとめた本。

坂本龍一のことは名前ほどよく知らない。
ミュージシャンとして、グループで活動していたYMOの曲は数曲しか聞いたことないし、ソロでも『戦場のメリークリスマス』と『BTTB』くらいしか知らない。
どちらかというとイラク戦争が勃発した後や、原発事故後に平和的な発言などをしている印象の方が強い。
学生運動などにも参加していたことがあるらしく、僕にはただの著名な平和主義者に見えるが、左翼とされているようだ。

そして、鈴木邦夫。
その存在を初めて知ったのは朝まで生テレビだった。
その穏やかな物言いと、従来の固定観念に囚われずに国の事を考えて発言する様子をみて、それまで右翼とは街宣車で軍歌を鳴らしながらなんらかの主張をがなり立てる人達のことだと思っていた僕の浅い『右翼』に対するイメージを変えた人だ。

本来であれば交わることのない水と油のようなところから出てきている2人の対談が成立しているのは、彼らが別の方向から物事をみているようでありながらイデオロギーの前に常識や教養があるということ。
そして彼ら自身が自らの立ち位置を理解していながらも、単純に右とか左とかで思想を区別しないところにあって、これがネトウヨのような幼稚な発想に陥る事なく対談が成立している理由なんだろうなぁと思います。
なんでも2人が初めて会話したのが首相官邸前の原発デモだというのだから面白い。鈴木邦夫という人は右翼だから原発を肯定するという単純な発想ではなく、愛国者としての原発に疑問を感じ、脱原発活動をしている人なんですね。

そもそも右翼と左翼というのは、民主化を求めて戦ったフランス革命後の議会で議長席からみて右側に保守派が座っていて、左側に改革派が座っていたことがあるんですよね。そんなことから国や時代に応じて微妙に立ち位置が異なるのが「右翼」と「左翼」という分類なわけですが、最近はそういうの抜きにしてステレオタイプで過激な発言をしている自称ウヨクが多い気がするんですよね。
そんな僕もこの曖昧な分類を理解できてるかというとそんなに自信はありません。

ちなみにですが、右翼と左翼に関しては昔読んだこの本がとてもわかりやすかったです。

本書の中では坂本龍一の父親を介して2人の意外な共通点が見つかったり、それぞれ右翼も左翼の運動の中で重要な存在であった人物や団体などにも触れられているので、全く知らなかった世界とその運動の系譜を垣間みることができます。

あえて自分を分類するのであれば、おそらく中道左派あたりになるんだろうなと思いつつ、そんなことを言うには無知にも程があると思った対談本でした。

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