[書評] デザイナーの視点で綴る日常のエッセイ『デザインのめざめ』

2015年12月28日
2017年5月16日
gappacker
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デザインのめざめ
日本のグラフィックデザイナーの中で最も尊敬するデザイナー、原研哉さんのエッセイ。
原さんのデザインはどれもシンプルかつ、もれなく美しい。

有名デザイナーの中には、ファッション感覚というか、時代に対する感度を手掛かりに、「エイッ」とデザインしてるんじゃないかという人もいるんだけど、原さんがデザインしたり企画するものは、デザインする対象に対して真摯に向き合い、歴史や背景を汲み取り、それを丁寧に積み上げていくような感じがある。そこにあって然るべきものなんだけど、誰もがまだ見えてないだけの「正解」に近いものを、浮かび上がらせているだけのようにも取れる。だから、デザインしたものはいい意味でインパクトが少ない。
簡単そうに見えるそれらのものは、職人でなければできないのだけど、素人は通り過ぎてしまいかねないほど自然なデザインなのだ。
しかし、多くのデザイナーの作品が時代の洗礼を浴びて、淘汰されていく中で、原さんのデザインするものは多分古びる事はないだろうと思う。

そして、そんな原さんの文章には思想がにじみ出ている。
もちろん編集者に渡る前の文章がどのようなものなのか知る由もない。
ただ、この人に限ってはそれほど手を入れられることはないんじゃないかとこれまでの作品をみていて、勝手にそう思ってる。

本書は原さんが日常のエピソードをまとめたエッセイである。
その中には、原さんがどのようにデザインの着想を得ているかのようなヒントが垣間見てとれる。

本書『デザインのめざめ』は、もともと日経新聞に連載していた記事をまとめ、朝日新聞から2001年に出版された『マカロニの穴のなぞ』に、5篇の新作を増補したものだそうだ。デジカメがまだそれほど普及していなかった時代の話であったり、無印良品のアートディレクターになる前に無印良品に言及したものなど、時間の経過を感じさせる記事もある。

デザイン関連の本は高いものが多いので、文庫本で読めるのは嬉しい。
原研哉さんのファンだけではなく、無印良品が好きな人にも読んでもらいたい1冊です。

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