[書評] 箱まで計算されていた『アップルのデザイン戦略』

2016年1月11日
2017年5月16日
gappacker
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アップルのデザイン戦略
先日、読んだ本[書評] デザインで振り返るApple『アップルのデザイン』の続編にあたる本。

読んだ感想

アップルを作り上げたカリスマ、スティーブ・ジョブズ。
彼が亡くなった後に出たアップルのデザイン面に触れた書籍の続編。
紹介しているのもiPhone4S以降の製品で、ジョブズの影響は残っているものの、亡くなってから発売された製品であり、iPhone5cの中身の作りの雑さなどの記事を読んでいると、中身まで圧倒的にこだわり抜いていた思想に反しているように感じてしまうものもある。
ジョブズが存命だったとして、これらのプロダクトは発売されていたのだろうか?と気になってしまうものもある。

ここまで箱にこだわっていたとは

そんな製品とは別に、パッケージの箱に関して説明している2章では、箱に対する徹底的な拘り具合に唸ることは間違いない。アップルの箱と他の一般的な製品の箱とを比較した時に、綺麗だと感じる人は多いと思うが、それは使用している紙質や印刷のせいではない。徹底的にこだわった箱の設計と組み方の部分にある。

今回、この本を読んで、改めてアップルの箱を見直した。
通常、製品を手にした時、箱に触れるのは数分でしかない。しかも製品プロダクトそのものを手にする前である。
箱をまじまじと見る人はそれほど多くないだろうし、場合によっては箱に触れている時間は1分を切る可能性さえあリうる。
そんな一瞬の体験ですら、手を抜くことなく、しっかりデザインに取り組んでいた点には改めて驚かされた。

角と直線は綺麗に出て、フラットな面がフラットであるべき。そのために何をしたのかという部分は、図面つきで解説している本書を読んで見て欲しい。
この部分だけでも、アップルやパッケージデザインが好きな人なら絶対に読んでおくべきだと思う。

本としては残念な出来

ジョブズが亡くなった後い発売された製品の分析と、箱の秘密のところまでの前半の半分は面白く読めた。
しかし、第3章以降(後半の半分)は、ページ稼ぎとも思える内容が多すぎる。

『アップルのデザイン戦略』というタイトルの本の中で、比較とはいえ、マイクロソフトのSurfaceの分析を始めてしまうという迷走から始まり、特許から未来を見通すという部分に関しては、ただの日経デザインの予想でしかない。しかも、iWatchに関してはすでに市場に投入されているので、その予想が見事なまでに的外れなこともわかる。最後のインタビューの章は、少し足りないページ数を補うために付け足されたようにしか思えない。

前作はアップルのデザイン史を見直すた意味で興味深い本だった。
その反面、この本に限って言えば、新プロダクトの分析を行っている1章と、箱に関する2章以外は内容がお粗末すぎる。一冊目の売れ行きが良かったんだろうが、これではアップルという名前に便乗しただけのようにも思えてしまう。

この本の出来の悪さが、ジョブズ亡き後のアップルの行く末を暗示しているかのようなってしまっているのが残念である。
ジョブズなら3章以降はやり直しになってたんじゃないか。そういう意味では残念な本でもあった。

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