[書評] テクニックではなく心構えの文章本『いますぐ書け、の文章法』

2015年12月28日
2017年5月16日
gappacker
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いますぐ書け、の文章法
文章を書くのが苦手で、いくら書いても、苦手意識を克服できる予感すらしない。
ちょっとはマシになりたいと、文章論や文章の書き方についての本を手にすることで、少しは成長した気になって心の平穏を保つ。そんなことを繰り返している人はきっと少なくないはずだ。

この本の著者である堀井憲一郎氏はコラムニスト、フリーライターとして各誌で記事を執筆していて、著書も10冊あまりを出しているプロのもの書きである。

文章で表現しようしない

著者は言う。
いいから書け。個性を出そうとするな。
表現しようとするな。

アマチュアはいい文章を書こうとする。
そして文章に対して幻想を持っている。

読者よりも自分のことを考えている時点でプロではないのだという。
つまりプロとアマの差は我を捨て、真剣に読者の事を考えて文章を書けてるかどうかなのだ。

文章は、発表した人のものではない。
読んでくれる人が存在して、初めて意味がある。つまり文章は読み手のものである。百歩譲っても、書き手と読み手、共有のものである。

良い文章を書けるようになるためには、読者のこと考え、背伸びせずに書けということと、いい文章をひたすら読むということの二つしかないそうだ。

そんな主張であるから、本書で触れられている文章に関するテクニックらしいものをそれほど多くない。
それもよく見るものであり、目新しさはないのだけれど、最低限、これくらいは意識しておいた方がいいと思うものなのだろう。

  • 文章を書くのであれば断定する。
  • 一人称をなるべく冒頭に使わない
  • 結論を書き出してから経緯
  • 「が」の後に「、」を打ちたくなったら「。」を打つ。
  • 文章の精度をあげるには足すのではなく、引く
  • 辞書を引くのはインプットのときだけ、アウトプットは自前の言葉で

読んでみての感想

あまり技術的な部分に触れていないにもかかわらず、文章の本として信頼できると感じるのは、その潔さにあるのだろう。
きれいな文章を書こうとなんかしなくていい。自分もそんなもの書けないけど、プロとして続けられているよ。いいからとりあえず書いちゃいなよ。タイトルからするとスパルタっぽい感じと思わせつつ、自然と書くことを促されるてしまうような温かさを感じる。

本書のなかで、著者はかなり意図的に自ら脱線しているような節がある。
著者は、書く前に考えていた内容どおりにしかならない文章はつまらない文章であり、書いているうちに文字そのものが意思を持って自走していくような文章こそが理想だという考えを持っている。後半部分に関しては、良い文章を書こうとするあまり、つまらない文章になってしまいがちな人たちに対して、無理にまとまる必要はないんだと、自らの文章を持って教えてくれているようにも感じる。

新書でありながら、アカデミックな感じや、堅苦しさがなく、文章に関する本としては割と珍しい内容です。
どちらかというと、部活のOBの人が遊びに来た時に、話を聞いているような感覚に近い本でした。

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