[書評] アップルの快進撃を支えたデザイナー『ジョナサン・アイブ』

2016年4月18日
2017年5月16日
gappacker
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ジョナサン・アイブ
アップルのデザイナーとして入社し、現在はすべての製品のデザインを行うデザインチームのトップである最高デザイン責任者になり、アップルの上級副社長でもあるジョナサン・アイブ。本書は彼の生い立ちから、受けてきたデザイン教育、アップルに入社することになった経緯、アップル入社後の様々な取り組みを知ることができる本である。

ジョナサン・アイブの生い立ちと経歴

幼少期〜青年期

ジョナサン・アイブの父親は教師であり、優れた教育者でありながら、同時にイギリスのデザイン教育に大きく貢献した人物だったそう。恵まれた環境で育てられたアイブの才能は開花し、デザイン企業が学費のスポンサーになり、数々の賞を受賞するなど、若くして頭角を現していたデザインサラブレッドだったのがよくわかる。

アップル入社後

ジョナサン・アイブは1992年、デザイン事務所で活躍している時に、ロバート・ブルーナーに口説かれ、アップルに入社した。エンジニア主導の製品開発に、(お化粧として)外観をデザインするという役割でしかなかったデザインチームの地位が徐々に向上していき、最終的にはデザインを実現させるために、エンジニアが奔走するという今のアップルのベースができていく過程についても書かれている。

アップルを支えたキーマン達

アップルは徹底した秘密主義であり、どのように製品開発が行われているのかを知るものは少ない。たとえ知っていたとしても厳しい守秘義務を課せられていて、機密を漏らしたものは解雇されるなど厳しいペナルティを与えられたり、場合によっては訴えられる可能性もある。そのため、たとえ過去のことであっても口にするものは少ない。

過去にアップルに在籍した人間や匿名であることを条件に集められたという精度の高い情報から、多角的に過去のアップルの製品開発や社内事情、社内の派閥闘争などについても書かれている。ジョナサン・アイブに対しても、謙虚だけど、デザインに関しては妥協しない芯のある人間性であるとしつつも、衝突はあったようだ。

ブルーナーという存在

今では考えられないことだが、1990年以前のアップルにはデザイン部門がなく、すべてのデザインをフロッグ・デザインに依頼していた。そしてフロッグデザインとの契約を解消した際に、デザイナーが必要となり、デザイン部門を立ち上げることを条件にロバート・ブルーナーが入社する。それが1990年のことであり、このブルーナーこそがデザインチームを立ち上げ、ジョナサン・アイブをアップルに呼び込むことになる。

ティム・クック

クックは1998年にオペレーションの上級副社長として採用された。クックが入社してから7ヶ月で、手元在庫は30日から6日に削減された。そして1999年にはわずか2日分まで減る。物腰の柔らかさは、数々の人材をクビにしてきたジョブズとうまくいった数少ない人材であり、その調整能力は著しく高く、実績も申し分ないため、ジョブズ亡き後、CEOとなるのにもっともふさわしい人間であるかのように思える。

読んてみた感想

アップルはジョブズが復帰してから業績が回復し、その後の快進撃が際立っているため、彼のカリスマ性ばかりが取り上げられることが多かった。しかし実際には、方向性が曖昧で業績が不調だった時期に、ロバート・ブルーナーという素晴らしい人物が、今のアップルを支えるジョナサン・アイブを始めとしたデザインチームに優秀な人材を揃えていた。

アイブだけでなく、2000年代のアップルを知ることができる本

当然のことではあるけれど、今のアップルの成功はジョブズだけが成し遂げたものではなく、ロバート・ブルーナーが一人でデザイン・チームiDgを作らなければありえなかったし、そこに属したジョナサン・アイブをはじめとした優れたデザイナー達がいなくても不可能だっただろう。

復帰後のジョブズは、アップル製品が売れないのはいいものを作っていないからだとし、自分の理想を体現するために、製品ラインナップを絞り、デザインチームを最大限活用した。
そして、アップルの製品が市場に評価されだしてからは、ティム・クックという優秀な人材が在庫管理と生産性の効率化に手腕を発揮した。それが、あれだけの製品を秘密裏に開発し世界中に届けることができた理由でもある。

本書はジョナサン・アイブにフォーカスしているものの、彼の歩みはそのまま2000年代のアップルの復活劇から躍進への歴史そのものでもある。あまり表に出ることのないアップルの取り組みや歴史、過去の製品が発売された裏でどんなことが起きていたのかを知ることができる貴重な本なのである。

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