[書評] 面白い書評はあっても、正しい書評はない。書評をめぐるあれこれ『ニッポンの書評』

2014年10月22日
2017年5月16日
gappacker
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ニッポンの書評

書評家による書評についての本

書評を読んで本を買ったことはあるだろうか?
あなたがその本を買ったのは、なぜだろうか?
そもそも理想的な書評ってどんなものなのだろうか?

以前、書評ブログ記事100本突破。書評についてじっくり考えてみる。という記事で、書評について少し書いたのだが、この本の存在を知って、プロはどんな事を思って書評を書いているのかが気になり、読んでみることにした。

著者はライター、そしてブックレビュアーとして活躍し、書評講座も開講している豊崎由美さん。これまで著書も出されている方で、中には未読だが見かけたことのあるタイトルの本もあった。

彼女のスタンスは面白い書評はあっても、正しい書評はない。というもの。
そんなプロの書評家である彼女の書評観は下記のようなもの。

  1. 自分の知識や頭の良さをひけらかすために、対象書籍を利用するような「オレ様」書評は品性下劣
  2. 贈与としての書評は読者の信頼を失うので自殺行為
  3. 書評は読者に向かって書かれなければならない。

そして自らへの戒めとして、このようにも書かれています。

書評はまずはなにより取り上げた本の魅力を伝える文章であってほしい。読者が「このn本を読んでみたい」という気持ちにさせられる内容であってほしい。自分の考えを他者に伝えるための容れ物として対象書籍を利用してはならない。書評は作家の機嫌をとるために書かれてはならない。

本書の内容と構成

書評について書かれた本なので、書評について書かれているのは当然なのだけど、書評の役割や、書評と批評の違い、書評そのものの「読み物」としての面白さ、文字数、海外と日本における役割や文化の違い、ネタばらしについて、書評の比較、プロとアマの違い、Amazonレビューについて、などなど、一口に書評に関しての本といってもその切り口は様々。

自身の書いた過去の書評に対して自省しつつも、名指しで他の方の書評やアマチュア書評家をバッタバッタと切り倒すところも。
巻末では、メディア史や文学を専門とされている大澤聡さんという方との対談も収められています。

読んだ感想

駄文とはいえ、このブログでも様々な本を紹介してきました。
それは書評というよりも、ブックレビュー的な響きのほうが近いのかもしれないし、なんとなく書評と軽い気持ちで名乗って本を紹介している自分の浅はかさに(デカくでちまったな。オマエ。)とか思ったりもするのですが、それと同時に、感じたままに正直に書くしかないでしょうよ。という開き直る気持ちもあります。

このブログでは、書評(と名乗ってる)以外の記事も含め、大半が800文字〜2000文字くらいの文字数なのですが、日本の書評に割り当てられている文字数は800字から1200字くらいのものが多いそうです。

プロの書評家はその文字数制限のために、倍近い文字数のものを削ぎ落として、完成させているのだとか。
僕もそうですが、多くの書評ブロガーは文字数が足りずに増やそうとすることはあっても、削ぎ落とすことなど、ほとんどないのではないでしょうか。
必要性がないと言えばそれまでですが、この削ぎ落とす過程にこそ、プロとアマの力の差が如実に表れるところなのかもしれません。

書評に対する愛と、おかしいと感じている部分への主張が詰まった愛の詰まった書評本という、安っぽくも、あながち間違ってるとも思えない評価で終わりにしたいと思います。

これまでなんとなく読んでいた書評の受け取り方が変わりそうな本でした。

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